『空飛ぶ悪魔に魅せられて -謎の猛禽フォークランドカラカラをめぐる旅』 ジョナサン・マイバーグ
的場 知之訳 青土社 2024年4月 481頁 3,800円+税 ISBN978-4-7917-7637-5
英国の博物学者チャールズ・ダーウィンは若き日のビーグル号での航海の序盤の1833年、南米南端大西洋のフォークランド諸島(アルゼンチンではマルビナス諸島と呼ぶ)で鷹と烏の雑種のような「空飛ぶ悪魔」とも呼ばれたフォークランドカラカラに出会い、人間を恐れず、好奇心旺盛でいたずら好きで頭がいい、他の土地にはほとんどいない死肉を好む猛禽類に驚かされた。
ダーウィンが記述を遺して以降2世紀近く経ち、この鳥に興味を持ち修士号を得た著者は、その生態を多角的に追い近縁種の調査をするため、ガイアナの熱帯密林を訪れ、カリフォルニア半島の西方メキシコのバハカリフォルニア半島の西方320kmに浮かぶ島にグアダルーペカラカラの調査記録を調べ、チリ北部のアタカマ高山砂漠のアンデスカラカラなどを探索し、アルゼンチン生まれの英国人博物学者・作家のハドソンの著作を漁り、メキシコからパタゴニアに至る先住民の伝承を聞き、多くの研究者等にインタビューをして、この自然科学、紀行文学、伝記を縦糸に多彩なストーリーを織り込んだ魅力と発見にあふれた物語を纏めている。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024年夏号(No.1447)より〕