『ペルーからきた私の娘 新装版』 藤本 和子
晶文社 2024年4月 243頁 1,800円+税 ISBN978-4-7949-7421-1
1939年生まれで米文学翻訳者、米黒人女性の聞き書きやエッセイストとして多くの著訳書を出している著者が、1984年に発表した表題のエッセイと二編から構成された、移り住んだ米国の様々な町で書き続けたさり気ない暮らしのスケッチ集。「ペルーから来た私の娘」(7~65頁)は、ペルーから連れ帰った赤ん坊ヤエルとユダヤ人の夫、日本人の妻という、異なる3か国の旅券をもった男女、子どもと大人の家族が、米国の小さな町で一つの「チーム」を組んで暮らし始めた。引き取りにいったリマでは、ペルーの女性解放運動の指導者とされ、現在は軍政下のペルー文化庁で文化企画部長を務めている女性を3人で訪ね、インタビューした。彼女はペルーの女性解放運動はラテンアメリカに共通のフェミニスト社会主義に基づき、それにペルー的特質を加えたものと定義したが、ペルー文化は根無し性と形容した。
ペルーからヤエルを連れ出す手続きは煩雑で時間と手間がかかる大仕事で、真夏のリマを駆けずり回ってやっと在ペルー米国大使館で査証を取りつけ米国へ発つ前日までの1か月余の出来事とペルー家庭での間借り生活を綴っている。
〔桜井 敏浩〕