サンダー・エリックス・キャッツ 水原 文訳 オライリー・ジャパン発行 オーム社発行 2024年6月 322頁 3,200円+税 ISBN978-4-8144-0057-7
米国テネシー州の農村地帯に住み発酵について独学で研究してきた著者は、料理、栄養、園芸にも興味をもち、世界各地で発酵ワークショップで教え著書も出している。大学を出たばかりにサハラ砂漠をヒッチハイクで旅した際にニジェールで味わった椰子の樹液を発酵させたパームワインに魅せられた。世界中いたるところで実践されている発酵の実用的な価値・恩恵を、様々な製造プロセスとともにその魅力を多くのカラー写真を付して紹介している。
ラテンアメリカでの発酵食品については、メキシコ山岳地帯のマゲイ(リュウゼツラン)の樹液から作る発酵飲料プルケやメスカル(テキーラもその一種)から始まり、コロンビアで作られている熟したパイナップルを摺り下ろして発酵させたグアラポ・デ・ピーニャ、カリブ海のモービーの樹皮から作るソフトドリンクのモービー、南米でトウモロコシ等穀物、芋類、果実、蜂蜜等糖類を醸した各種の飲料チチャ、エクアドルで出された発酵キャッサバ(ユカ芋)のトルティージャ、アマゾン河流域での苦味種のキャッサバの有毒汁を発酵させ煮詰めた調味料のトゥクピー、コスタリカで遭遇したトウモロコシで育てた黴をチチャのスターターに用いるオコ、カカオの果肉は発酵させてジュースに、種はカカオ豆としてチョコレートの原料になる。コロンビアでホットチョコレート飲料、朝食にもなっているチョクラなどを紹介しており、コーヒーもまた摘み取りから焙煎の間の様々な段階で発酵をともなうことも指摘している。
〔桜井 敏浩〕