『多言語的なアメリカ -移動文学論Ⅲ』
西 成彦 作品社 2024年4月 277頁 3,800円+税 ISBN978-4-86793-030-4
著者はポーランド文学、比較文学、異文化接触論を専門とする立命館大学名誉教授。東欧、“多言語の海”カリブ海域、同地域と関わりあるラフカディオ・ハーン、ブラジル日本人文学と「カボクロ(アフリカ系の混じった現地人)」問題、アマゾンのマナウス出身の作家ミルトン・ハトゥンの『エルドラードの孤児』に登場する日本人オヤマについて訳者武田千香が追ったその足跡と日本人アマゾン開拓史、両大戦間期のポーランドにおけるブラジル熱、オーストリア生まれのユダヤ系作家ツヴァイクがリオデジャネイロに滞在し1941年に書き上げた『未来の国ブラジル』、アマゾンの先住民を調査したフランスの文化人類学者レヴィ=ストロース等ブラジルに関わる読書ノート、中東欧ユダヤ人の間で話されているイディッシュ語を追いかけてアルゼンチンを訪れた後書きなど、全編に言及されている実に多くの文学で使われてきたイディッシュ語、英語、フランス語、パピアメント語(コロンビア北部、ベネズエラ国境に近いキュラソー島等で話されているポルトガル語語彙系のクレオール語)、ポルトガル語等の実に多くの文学書を原語・翻訳書で読破した著者の博覧・博学多識には驚嘆する。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024年秋号(No.1448)より〕