『ソフィアの災難』
グラリッセ・リスペクトル 福嶋 伸洋・武田 千香編訳 河出書房新社 2024年6月 301頁 2,700円+税 ISBN978-4-309-20904-3
ウクライナで生まれ生後間もなくブラジルへ移住し、20世紀のブラジル文学を代表する作家の一人として世界的にも高く評価されている作家(1920~77年)の短編小説を訳者が独自に編集、翻訳したもの。これらの短編には、つつがなく日常を送る登場人物がさり気ない出来事をきっかけにそれまでの自分や人生に疑問を抱き、価値観や世界観を一変させ、そうした場面を設定する手法で、自分とは何か、人間とは何か、人間の感情はどこから来ているかをいろいろな角度から手を替え品を替えて踏み入ろうとするが、結局はその周りでぐるぐる回るだけという、時にそうした感覚を抱かせる文体で語られている(訳者の後書き「翻訳に寄せて」より)。訳文は分かり易いが、その真意を知ることは容易ではないかもしれない。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024年秋号(No.1448)より〕