連載エッセイ409:広瀬明久「ワンランク上のスペイン語 議論の最中に割り込む」 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ409:広瀬明久「ワンランク上のスペイン語 議論の最中に割り込む」


連載エッセイ 409

ワンランク上のスペイン語  
議論の最中に割り込む

執筆者:広瀬明久(Sociedad Intercultural S.C.創立者、社長)

日本文化において、他人の話を遮ることは失礼とされています。そのため、多くの日本人ビジネスパーソンは議論の場で、相手が話し終えるまで待つことが普通です。

しかし、スペイン語圏のビジネスシーンでは、このような奥ゆかしさが必ずしも適切とは限りません。むしろ、自己主張をしなければ相手に意見を伝える機会を逃してしまう可能性があります。スペイン語圏、特にメキシコでは、直接的な対立は避ける傾向はあるものの、沈黙は譲歩と見なされがちなので、必要に応じて話の途中で割り込む技術が重要です。

もちろん、割り込む場合も礼儀を守りつつ、適切なタイミングと言葉遣いを選ぶ必要があります。今回は、スペイン語で丁寧に相手の話を遮り、自分の意見を挟むための便利なフレーズを紹介します。これらの表現は、スペイン語圏のビジネスシーンで役立つだけでなく、異文化間のコミュニケーションを円滑に進めるための有効なツールとなります。

Perdone que lo interrumpa, pero …
(話を遮って申し訳ありませんが…)
これは非常に丁寧で、かつよく使われる表現です。この表現は、ビジネスの会議などで頻繁に使用され、相手への敬意を保ちつつ意見を述べる場面に適しています。

例文 Perdone que lo interrumpa, pero la competencia ha lanzado una oferta similar, así que debemos reaccionar de inmediato.
(話を遮って申し訳ありませんが、競合が同様の提案を出してきたため、すぐに対応しなければなりません。)

Disculpa la interrupción, pero…
(途中で申し訳ないけど…)
ややカジュアルですが依然としてフォーマルな場でも使える表現です。シンプルかつ効率的で、軽いトーンで使うことができます。特に、相手がすでに長時間話している場合や、緊急に自分の意見を述べる必要がある場合に役立つフレーズです

例文 Disculpa la interrupción, pero necesito decirte algo urgente antes de que sigamos.”
(途中で申し訳ないけど、続ける前に急いで言わなきゃならないことがあるんだ。)

Lo siento, pero necesito aclarar algo.
(申し訳ありませんが、少し明確にしたい点があります。)
このフレーズは、すでに誤解や曖昧さが発生していると感じたときに使用されます。意見の違いや理解不足が話の進行に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、この表現を使って、話を割って意見を述べることが効果的です。

Con su permiso, quisiera añadir algo.
(お許しいただければ、少し加えたいのですが。)
con su permisoは「お許しいただければ」という丁寧な前置きとして使われ、控えめながらも割り込む際に非常に役立つ表現です。こうした前置きを使用することで相手の話の流れを尊重しつつ、意見を付け加えることができます。Con su permisoはSi me permiteとしても同様の意味で、どちらもよく使われます。

Perdón, ¿puedo intervenir un momento?
(すみません、少し割り込んでもいいですか?)
これは、控えめながらも率直に割り込むための表現です。intervenir(介入する)という動詞を使用して、少しの時間を要求します。このフレーズは、迅速に意見を述べたいときや、他の議論が進行している最中に自分の意見を追加したいときに便利です。

また、ビジネスシーンに限らず、日常生活でも、こちらが理解しているかどうかにかかわらず、一方的に話されることがあります。そのような場合、Disculpe. No puedo seguir lo que me está diciendo(すみません。あなたが言っていることについていけません)と言って、相手の話を中断してもらうとよいでしょう。

スペイン語圏における割り込みの文化的背景

スペイン語圏では、対話の際に話を遮ること自体が必ずしも無礼とされるわけではありません。むしろ、活発な議論や対話の中では、互いに意見を交換することが重視され、割り込むことが対話を促進する手段と見なされる場合もあります。このような文化的な違いを理解し、適切なタイミングと表現を選んで使うことで、ビジネスシーンにおける効果的なコミュニケーションが可能になります。

先に「沈黙は譲歩と見なされがち」の記しましたが、スペイン語にはEl que calla otorgaという諺があります。「黙っている者は同意している」という意味です。つまり、何かに反対しないで黙っていることは、その状況や意見に暗黙の了解を与えていると見なされるということです。

特に、日本人ビジネスパーソンにとっては、自らの意見を適切に伝えることが、スペイン語圏で成功するための重要なスキルとなります。今回紹介した表現をうまく活用し、積極的に対話に参加することで、メキシコやその他のスペイン語圏でのビジネスをよりスムーズに進めることができるでしょう。

ぜひ、これらの表現をビジネスシーンで活用して、円滑なコミュニケーションを図ってみてください。

以  上