『奴隷制廃止の世紀 1793-1888』
マルセル・ドリニー 山田 芙美・山本 周重訳 白水社(文庫クセジュ)
2024年4月 171頁 1,400円+税 ISBN978-4-560-51064-3
コロンブスの第1回新大陸上陸からわずか11年後の1503年に最初のアフリカ人奴隷船がサン・ドマング(イスパニョーラ島、現在のハイチ)に到着し、1503年には最初の奴隷反乱が発生した。奴隷制は新世界の植民地の大部分で労働形態として導入され四半世紀以上続いたが、サン・ドマングで1793年に奴隷の大規模叛乱を契機に奴隷制が廃止され、1888年に最後まで続いたブラジルで奴隷制が廃止されるまでの95年間の奴隷制廃止の歴史を、奴隷貿易と奴隷制に対する批判、奴隷制廃止運動の誕生と飛躍的な発展、奴隷貿易廃止の失敗とサン・ドマングにおける奴隷蜂起に因る1794年の最初の奴隷制廃止、奴隷制の復活とサン・ドマングにおける失敗(1801~04年)、19世紀の奴隷制廃止、奴隷を失う所有者に対する賠償金問題の史料に基づく叙述、最後にポスト奴隷制時代の社会の変転まで言及している。新大陸植民地における奴隷貿易、奴隷制についての文献は多いが、本書はサン・ドマングの事例を中心に中南米・カリブでの奴隷制終焉のプロセス、さらにポスト奴隷制期に様々な性質をもつ社会が生まれたこと考えさせようとしている
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2024/25年冬号(No.1449)より〕