『キング・タビー -ダブの創始者、そしてレゲエの中心にいた男』 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『キング・タビー -ダブの創始者、そしてレゲエの中心にいた男』


『キング・タビー -ダブの創始者、そしてレゲエの中心にいた男』
ティボー・エレンガルト 鈴木 孝弥訳 Pヴァイン発行・日販アイ・ピー・エス発売
2024年5月 480頁 3,800円+税 ISBN978-4-910511-73-3

 ジャマイカのレゲエといえば誰しも真っ先にボブ・マーリーの名を挙げるが、確かにマーリーはレゲエを代表するかもしれないが、レゲエの中心にいたのは控えめなキング・タビーだという。本書はジャマイカのサウンド・エンジニア、音楽プロデューサー、ミュージシャンであるキング・タビー(本名オズボーン・ラドック、1941~89年)について、フランスのレゲエ誌の編集長、レゲエ・ジャマイカ専門の出版社の代表である著者による世界初、唯一のオフィシャル・バイオグラフィーである。
ダブのオリジナル・アルバムは数少ないが、ダブがあらゆるサブカルチャーの祖であるジャマイカのサウンドシステムのリミックス技術の祖であることを明らかにしている。といっても本書はダブの技術的側面を掘り下げたものではなく、タビー本人の言と彼を取り巻いた関係者の証言、資料・インタビューに拠って、黄金時代のレゲエ史の中での業績、レゲエにとどまらない世界的影響、1989年に帰宅したところを何者かに銃撃され死亡(未だに単なる強盗ではなさそうな犯人像は明らかになっていない)するまで、ポピュラー音楽の進化においても重要な人物、謎に包まれたキング・タビーの生涯を克明に述べている。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2024/25年冬号(No.1449)より〕