カール・タウベ 藤田美砂子訳 筑摩書房(ちくま学芸文庫)217頁 2024年11月 1,200円+税 ISBN978-4-480-51262-8
16世紀にスペイン人に征服されたメソアメリカ文明の神話と伝承に共通する着想や宗教的モチーフを、著者がアステカとマヤ文明の代表的な神話を選んで概要を述べ、その中にこの先スペイン期から伝えられてきた神話のエピソードや神々には旧世界のものと酷似したものもあるが、あくまでアメリカ大陸で独自に形成されたものだと明言している。本書はメソアメリカで興亡した諸文明について説明し、メソアメリカ文明を理解する上で重要な暦法、宗教などの基礎事項と概念を解説しており、「ポポル・ヴフ」のような神話、植民地時代に遺された文献を通して伝えられた歴史と研究者たちの分析・研究内容を紹介している。最後にアステカ、マヤの神話の創世神話とトウモロコシの起源、具体的な神々について記述して、今なおアステカ、マヤ諸部族の観念や言語の中に生きているメソアメリカの人々への理解を助ける。
著者は人類学・美術史、就中メソアメリカ文明の図像研究で第一人者といわれる米国カリフォルニア大学教授。文庫版(原訳本は1996年 丸善刊)解説として「メソアメリカの神話と歴史」をわが国のマヤ考古学者青山和夫茨城大学教授が、本書のポイントと内容の補足解説、著者の研究歴などを簡潔に述べている。
〔桜井 敏浩〕