久野量一訳 水声社 2024年11月 269頁 3,000円+税 ISBN978-4-8010-0833-5
著者は1973年コロンビア生まれ、欧州で学びながら小説、翻訳を書き始め、日本でも4冊の長編の翻訳が刊行されている。この短編集は著者がまとまりのある構成に組み立てたと言っており、二度の世界大戦、朝鮮戦争、紛争、テロや事故などの後を、それらの暴力による死を生き延びた人を描いている。9編のうち「蛙」はコロンビアがラテンアメリカで唯一派兵した国である朝鮮戦争後に韓国からコロンビアにボゴタ市に寄贈された戦死者追悼の仏塔の記念式典を舞台に、帰還兵の回想と政府高官の娘が抱えている秘密が展開される。
〔桜井 敏浩〕