『食文化からブラジルを知るための55章』 (エリアスタディーズ 214) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『食文化からブラジルを知るための55章』 (エリアスタディーズ 214)


『食文化からブラジルを知るための55章』 (エリアスタディーズ 214)
岸和田 仁・麻生 雅人・山本 綾子編著 明石書店
2025年5月 353頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-5942-7
広大な国土、異なる気候・植生に加え、入植者・移民・奴隷導入に因る多民族国家ならではの歴史・文化的背景から混淆性と多様性が醸成され、料理素材の豊かさから多彩な食文化がある。本書はこのエリアスタディーズでは初めて巻頭15頁にカラー版のレシピ等を載せていて、ブラジルで長く生活し食文化に詳しい10人の知見に満ちた著者がブラジルの食文化に焦点を当てた解説書である。
先住民、アフリカ、ポルトガルにイタリア、中東、日本等アジアからの移民の食文化が加わり、各地の豊かな食材・加工食品の諸相、カシャッサ、ビール、コーヒー、マテ茶、ワインなどの飲料があって地方料理もそれぞれ特色があり、日常の食事や外食、カトリック行事の影響など暮らしの中の食文化を紹介し、民俗学者や文学者の食に関わる論述に至るまで、広範なテーマと各項の執筆者の知見・蘊蓄にはなるほどと思わせられる部分が多い。

〔桜井 敏浩〕

〔『ラテンアメリカ時報』2025年夏号(No.1451)より〕