『流域コモンズを水銀汚染から守れ ―ウルグアイにおける統合的流域水質管理協力の20年(JICAプロジェクト・ヒストリー・シリーズ)』
吉田 充夫 佐伯コミュニケーションズ出版事業部
2024年7月 195頁 1,000円+税 ISBN978-4-910089-40-9
ウルグアイは南米南部にあって経済成長を続けているが、それに因って河川の水質汚染が大きな問題になっている。国際協力機構(JICA)は2003年から水質管理支援に取り組んでおり、著者もウルグアイ環境総局長から水俣病の知見をもつ日本に水銀汚染対策支援の要請を受けて参画してきた。環境総局と関連機関の汚染管理や水質管理能力を強化し、コモンズとしての河川流域の水質管理体制を築き、その結果2013年に流域委員会が設置され、産業排水による水銀汚染の封じ込めに成功した。その成果はウルグアイ政府とJICAと共同で中南米諸国向けの第三国研修を行い近隣諸国に波及させている。
本書は持続可能な河川流域コモンズの水質管理の実現に取り組んだプロジェクトの軌跡の記録である。流域コモンズの8つの設計原理とその本プロジェクトでの実践の詳細を記述しているが、コモンズの形成とそのガバナンスの構築は当事者にしかできない、当事者が主体となって行うしかないとの指摘は説得力がある。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025年夏号(No.1451)より〕