『満洲移民とブラジル移民 ―信濃海外協会『海の外』を対象として』
森 武麿 不二出版
2025年2月 132頁 4,500円+税 ISBN978-4-8350-8844-0
近代日本移民はまず1881年のハワイを初めとし米本土、カナダと続き、日清・日露戦争後朝鮮そして台湾へ向かうものが激増したが、一方米国の日本移民制限が始まり1924年には排日移民法により日本人移民が事実上禁止されたことから1908年の笠戸丸移民に始まるブラジル移民が1930年代にピークを迎えたが、ここでも排日運動が起き1934年に禁止された。これに代わって移民が向かったのが満州である。本書はこの移民のブラジルから満州への転換を、1924年に信濃海外協会を中心に建設されるアリアンサ移住地を経て1932年の満州国建国後の満州への移民に至る過程を主に取り上げたものである。
信濃海外協会設立前からブラジルには長野県人の定住化を目指したレジストロ植民地があり、日本政府のブラジル移民の国策化が出稼ぎ農民ではなく定住移民を志向する意向に注目して、南米信濃村としてアリアンサ移住地が建設された。さらに海外移住組合法と拓務省の設立と改組、ブラジル移民政策の終焉、続く満州移民へ前史から太平洋戦争敗戦に因る海外移民渡航終了に至るまでを丹念に述べている。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2025年夏号(No.1451)より〕