浅香 幸枝(南山大学 元准教授)
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市民社会ネットワーク形成者としてのパンアメリカン日系協会 -参加国の動向と日本の対応 -浅香 幸枝(南山大学 元准教授・同ラテンアメリカ研究センター非常勤研究員)
はじめに:大陸のより良き市民として
1981年に第1回「パンアメリカン二世大会」がメキシコで開催され1、2024年には第21回「パンアメリカン日系大会」がパラグアイ・アスンシオンで行われた。この大会のモットーは「大陸のより良き市民になろう」であり、北から、カナダ、米国、メキシコ、キューバ(2024年より参加)、ドミニカ共和国、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル、ペルー、ボリビア、チリ、パラグアイ、アルゼンチン、ウルグアイの14か国が正式メンバーである。2024年大会は第1回大会後43年目の大会であり、コロナ禍後初の大会であった。世代交代の時期であり、運営するパラグアイの若者たちの活躍に参加者から賞賛の声があがった。
パンアメリカン日系大会に集う日系人は居住国のより良き市民として、日本から持ち込んだ良さを現地に活かそうとしている。その傾向はラテンアメリカの日系社会において顕著である。2015年に国連総会において全会一致で採択された「2030アジェンダ持続可能な開発目標(SDGs)実現」は、日本におけるのと同様にコロナ禍後初のパラグアイ・アスンシオンのパンアメリカン日系大会でも重要な位置付けであった。
本稿では、2024年8月30日から9月1日にかけて開催されたパンアメリカン日系大会への参与観察と関係者へのインタビュー、その後訪問したパラグアイ最初の移住地ラ・コルメナでの調査から、パラグアイを中心としてボリビア、メキシコの日系社会の動向と日本の対応について報告する。
パラグアイ大会:組織力と日本人力
本大会のテーマは“¡OÑONDIVEPA! CONSTRUYENDO ALIANZAS PARA UN FUTURO SOSTENIBLE”(皆一緒に:持続可能な未来のための連携の構築)であった。SDGs実現のためのあらゆる分野での活動について各国の事例を紹介し討論が行われた。
パラグアイでの開催は1991年に続いて2回目である。前回委員長であった笠松エミ氏が今回の運営委員会や若者たちも後ろからしっかりサポートし、参加者たちから、組織力の凄さと若者たちの精力的な貢献に羨ましいという声がよく聞こえた。パラグアイの日系社会は日本語や文化がよく継承されている。そのため、グアラニー語とスペイン語、日本語がうまく使われ、さらに日本的な価値観が活かされており、訪ねる度に感銘を受ける国である。
大会テーマの「持続可能な未来のための連携の構築」はSDGs実現の事例の交換とそれによる各日系社会の学びを目指すものだった。筆者は、SDGs実現の日本のパートナーとして最適な相手は南北アメリカに拡大する日系社会ではないかという仮説で、