【季刊誌サンプル】日系人・日系社会に関するJICAの取り組み−日系社会と国際協力: 移住者支援から共創型の連携パートナーへ 小原 学(JICA国際協力専門員) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】日系人・日系社会に関するJICAの取り組み−日系社会と国際協力: 移住者支援から共創型の連携パートナーへ 小原 学(JICA国際協力専門員)


【季刊誌サンプル】日系人・日系社会に関するJICAの取り組み−日系社会と国際協力:移住者支援から共創型の連携パートナーへ

小原 学(JICA国際協力専門員)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2025年秋号(No.1452)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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日系人・日系社会に関するJICA の取り組み-日系社会と国際協力:移住者支援から共創型の連携パートナーへ -小原 学(JICA 国際協力専門員)

はじめに:海を越えてつながる歴史と未来
かつて多くの移住者を送り出した横浜・みなとみらい地区に「海外移住資料館」がある。2002年の開館以来20年以上にわたり、日本人の海外移住の歴史、移住者や日系人の仕事や生活、そして現代の日系社会の姿を紹介してきた。ここはまた、遠く離れた国々と日本とのつながりを学び、感じたいと願う次世代の若者たちが訪れる場所でもある。
戦後のラテンアメリカ(中南米)への日本人移住は、国家的な政策として推進され、多くの移住者が新天地での生活に挑んだ。ブラジル、パラグアイ、ボリビアなどでは、日本人移住者が農業や地域開発の分野で重要な役割を担い、その後の国づくりに大きく貢献してきた。こうした移住者送出と定着を支援してきたのが、現在の国際協力機構(JICA)とその前身組織1である。営農指導や融資、インフラ整備、子弟の教育などを通じて、移住者の生活基盤を築き、日系社会の形成、さらには地域社会や経済の発展に寄与してきた。
時代の変化とともに、日系社会とJICAの関係性もまた大きく変化してきた。かつては援護や支援の対象であった日系社会は、今ではJICAの重要な連携パートナーとして、国際協力の現場で多様な役割を果たしており、そして近年は日本の多文化共生や地域活性化にも貢献しようとしている。
本稿では、JICAが進める日系社会との協力の方向性や事業の現状、そして未来に向けた共創型の連携の姿を紹介する。

JICAの方針:持続的な「共創社会」の構築に向けて
中南米には300万人を超える世界最大の日系社会が存在し、いわば「最強の知日派」として日本との強い絆でつながっている。その一方で、世代交代の進展、日本文化や日系社会に関心を持つ現地の若者の増加、新しい活動やネットワーク化の広がりなど、日系社会は大きな変化を迎えている。JICAは、こうした現代の変化を踏まえ、日系社会とのつながりを柔軟に見直し、持続可能な社会を共に創るパートナーとして重視している。その方針は次の3点に集約される。

(1)世代交代しつつある日系社会の持続的発展の後押し
若い世代が日系人としてのアイデンティティを確立していくことは、日系社会の持続的発展の基盤となる。また、近年は日系社会の中で非日系人の存在感が増し、女性や起業家など新しいアクターの活動や国境を越えたネットワークの形成も進展している。こうした現代の日系社会の特性を十分に踏まえながら、取り組みを進めていく。

(2)開発協力における共創パートナーとしての連携強化
日系社会は日本と現地社会を結ぶ「架け橋」として独自の強みを持つ。開発協力において対等なパートナーとして協働し、その知見や人材を活かして他国や他地域の課題解決にも貢献する。

(3)日系社会との連携による日本の国内課題解決への貢献
中南米の日系社会や在日日系人と協働し、外国にルーツを持つ子どもの教育・キャリア支援、外国人の高齢化対応、地方創生、多文化共生など、日本が直面する課題解決に取り組む。