【季刊誌サンプル】日本財団と日系社会の50年 —今、関係を深める理由 吉田 もも(日本財団 特定事業部) | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【季刊誌サンプル】日本財団と日系社会の50年 —今、関係を深める理由 吉田 もも(日本財団 特定事業部)


【季刊誌サンプル】日本財団と日系社会の50年 —今、関係を深める理由

吉田 もも(日本財団 特定事業部)

本記事は、『ラテンアメリカ時報』2025年秋号(No.1452)に掲載されている、特集記事のサンプルとなります。全容は当協会の会員となって頂くか、ご興味のある季刊誌を別途ご購入(1,250円+送料)頂くことで、ご高覧頂けます。

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日本財団と日系社会の50年 ―今、関係を深める理由 -吉田 もも(日本財団 特定事業部)
はじめに
日本財団では、1970年代からラテンアメリカを中心に日系社会への支援を継続してきた。過酷な環境の中で地域社会を築き上げてきた初期移住世代への「感謝と敬意」を形にする支援から始め、21世紀に入ってからは「未来を担う人材の育成」へと軸足を移してきた。
そして今、日本国内では急速な人口減少や国際人材の不足、世界ではグローバルサウスの存在感が高まるなど、国内外ともに社会は大きな転換点を迎えている。こうした変化の中で、日本とグローバルサウス各国をつなぐ「人」の存在が、あらためて重要になりつつある。
そこで日本財団は、ラテンアメリカを中心にした日系社会への取り組みに関する方針を新たにすることとした。目玉は日系人を対象とした奨学金制度の拡充である。これまで年間10名程度にとしていた採用者数を、最大30名規模まで3倍に拡大する予定だ。日本の内向き志向が強まり、ラテンアメリカ諸国との人的交流も希薄になる中での大転換だ。

「初期移住者の労苦に報いる」
―日本財団が日系支援に踏み出した原点
ボリビアの首都ラパスには、日本庭園がある。1974年、日本財団が日系社会支援としてラテンアメリカにおいて初めて手がけた支援の一つが、この庭園への資材整備であった。日本財団が「支援」という言葉を携えて初めて踏み込んだ場所であり、同時に、日系社会と共に歩む長い旅路の出発点であった。
日系の初期世代の方々は、日本を離れ、慣れない土地で農業や商業に従事しながら地域に根を張ってきた人々である。戦争や差別、経済的困難を乗り越えて家族を支え、コミュニティを築き上げてきたその歩みは、まさに「労苦」の一言に尽きる。
日本財団の日系社会支援の原点にあったのは、こうした初期移住者の方々の労苦に報いたいというまっすぐな想いであった。現地の人々の努力と忍耐、そして日本人としての誇りに対して、敬意をもって応える。その姿勢が、最初の支援に込められていた。
1970年代、各地の日本人会から求められていたのは、生活インフラの整備や福祉施設および文化施設の整備であった。病院、老人ホーム、日本語学校、文化会館、体育館など、具体的で切実なニーズが次々と寄せられた。それらは単なる建物ではない。現地に生きる日系人が、自らのルーツとつながり、次の世代に誇りを継承していくための場所としての意味を持っていた。日本財団はこうした要望に応えるかたちで、ハード支援を行ってきた。その多くが、現地の日系社会の拠点として、今なお大切に活用され続けている。

支援対象の変化 ―もの(ハード)から人(ソフト)へ
やがて時代は移り変わり、現地でのニーズも少しずつ変化していった。2000年代に入ると世代交代が進み、初期移住者に代わって、現地で生まれ育った新たな世代の方々も社会の中心に立つようになる。
日本語を話すことができない人も増え、文化的に日本との距離が広がってしまう懸念があった。そうした中、新たな世代の日系人の方々の声に耳を傾ける中で、支援の対象は「物(ハード)」から「人(ソフト)」へと移っていった。「初期世代の労苦に報いる」ことから、「次世代を育てる」ことへ。これが、日本財団の日系社会支援の形が大きく転換する、第一の分岐点である。
こうした背景を受けて、日本財団は2003年、「日本財団・日系スカラーシップ 夢の実現プロジェクト」(以降、「日系スカラーシップ」)を創設した。このプロジェクトは、日系社会に暮らす若者を対象に、日本で学ぶ機会を提供する制度である。開始から20年を経て、これまでに170人以上の奨学生を送り出してきた。彼らは、医学・教育・農業・文化芸術・地域開発など、多様な分野で学び、卒業後はその学