執筆者:新井賢一(Andes Tours Colombia代表)
先日視察出張でコロンビア国内東部にあるグアビアレ県を訪問しました。未知の国・コロンビアの中でも私自身勿論初めて訪れた場所でしたが、結果としてとても良い思い出を残せました。観光地としてのグアビアレ県の魅力を皆さんに紹介します。尚、外務省安全情報でグアビアレ県全域は現在レベル2である事を申し添えます。

首都ボゴタからグアビアレ県都San Jose del Guaviareまでは空路約一時間。進行方向右窓側に座ると途中からグアビアレ川の流れが見られ、着陸時にはかなり川に近づきここがジャングル地帯の中にある事が分かります。

ボゴタからフライトが一日一便・若しくは二便しかない為(2025年10月現在Satena航空・若しくはclic航空の二社)空港施設は小さいですが意外にも土産物店や売店などはある程度あり、アマゾンフルーツを使ったアイスクリームやジャム、カカオ製品やコカの葉を使ったお菓子その他などが売られています。

San Jose del Guaviareは海抜約200m・人口約55,000人の町です。町中の画像を撮影する事は出来ませんでしたが予想していたよりも色々なものが揃っている町である印象を持ちました。アマゾンジャングルの中にある町で例外なく暑いですが思ったほどの酷暑ではありませんでした。いわゆる観光スポットというものはなく、また移動手段は僅かにあるタクシーを利用するか基本は徒歩・UBERのような配車アプリは使えません。いわゆる繁華街を歩いているとあちこちで身なりは普通ながら顔つきから明らかに先住民と分かる人々の姿を見かけました。町中にあるマーケットではグアビアレ川で獲れた魚を干物にしたものを並べている店なども複数あり興味深く見学しました。

San Jose del Guaviareの町はグアビアレ川がU字に曲がる底の部分の畔にあり、町の外れには船着き場があります。ちょうど夕暮れ時にこの場所に着いた為ジャングルに落ちる夕陽がとても美しかったです。この船着場からグアビアレ川沿いの複数の集落へ乗合船が運航しているようです。

こちらも予想外でしたが町の繁華街では様々なカテゴリーのレストランが多数あり食事に困る事はありません(要スペイン語理解力)その中でこちらのお店ではカサベ(Casabe)と呼ばれるキャッサバ粉を練って薄く伸ばしたものを焼き上げる現地伝統食を使ったものが食べられる他、アマゾンフルーツを使ったアイスクリームやジュースなども楽しめます。特にカサベは滞在中一度は食べて頂きたいものです。
グアビアレ県にはいくつか観光スポットがありますがその中で今回二つの場所を皆様に紹介します。いずれも日本人の方々はもとよりコロンビア人でさえ知らない・行ったことがないという「究極の穴場的観光地」です。

最初に紹介するのが今から約12,000年前この地に住んでいた原始人達が描いた壁画が今に残るCerro Azul(セロ・アスール)です。グアビアレ県に点在する観光スポットを訪れるツアーでは全てのケースで画像の4WD車を利用する事になります。途中の道は全く整備されておらず悪路が続く個所もある為ツアーバスというものが存在せず、この種の車を利用しないと現地にたどり着く事が出来ません。乗り心地は覚悟してください。

Cerro Azulへのツアーは出発地点からジャングルの中を歩き、途中から約200mの高低差を登ります。ジャングル内ではクモザルなど複数種の野生の猿がそれぞれ縄張りを持ち木の上から我々を迎えてくれます。注意点としてはこのツアーは正直とても過酷で脚力にある程度自信がないと途中の登りは岩を上がったり短いはしごを上がったりする所がある為、高齢者の方は途中で挫折する可能性があります。また照り付ける日差しが強く相当体力を使う為、長袖シャツにジャージのような動きやすい服(ジーンズは不向き)+スポーツシューズ着用が絶対条件です。また、ペットボトルや水筒により飲み水は絶対携帯しないと途中でダウンしてしまいます。

過酷な登りを克服した者がたどり着いた場所にあるのがこれらの壁画です。Cerro Azulの山肌にある複数の岩肌に赤土をベースにした粘土質の顔料を用いて描かれたものです。これらの壁画は広範囲に点在していて総面積はおそらく世界最大級とされています。

約12,000年前のこの地は氷河期の終わり頃だったようで、壁画にはマンモスの一種やリャマ・ジャガー・亀やバクの一種その他無数の動物達や当時の人々の暮らしぶりなどが描かれています。中には大勢でマンモス狩りをする光景なども描かれていてそれらが未だ鮮明に残っている姿に呆然としました。これは驚愕に値します。

高い所に描かれている壁画についてはどうやらはしごを自作したようで、壁画の中にはしごも描かれています。それにしても高温多湿のジャングル地帯において12,000年の時を経て未だにここまで鮮明に残っている姿に心底感動しました。
このCerro Azulの壁画は2014年頃から調査が始まったというつい近年にその存在が発見されたものです。とはいえここは当時反政府ゲリラの潜伏拠点で実際ルート途中に巨大な洞窟がありそこにゲリラが潜んでいた為長年立ち入りが許されていませんでした。一般の人々が見学できるようになったのはつい数年前からの話です。それが故に大半コロンビア人でさえこの壁画の存在を知らないというのは当然です。

長さ約200mという巨大な洞窟内は無数のコウモリが住み真っ暗で且つ足元には大きな岩がゴロゴロある為、歩くのも容易ではない過酷な移動ルートです。ここは高齢者の方の移動はほぼ不可、そのような難路を経てたどり着くけるのがこの場所です。視界一杯に広大なジャングル地帯が広がります。ここが太古の昔氷河期だったとはとても想像がつかない素晴らしい場所でした。足元の岩肌の色や質からこの地質が相当古い事が容易に分かります。

そしてこちらがSan Jose del Guaviareの町から車で約30分という近距離にあるTrankilandia(トランキランディア)と名のエリア内にある世界有数の美しい川・Caño Sabana(カニョ・サバナ)です。日本人でこのカニョ・サバナを紹介するのは私が史上初かもしれません。こちらでは画像だけしかアップ出来ない為迫力感に欠けるのが残念ですがそれはもう美しいものでした。動画につきましては”X(旧Twitter)”やフェイスブック、インスタグラムなどで「カニョ サバナ」と検索するとヒットする筈です。

コロンビアが世界に誇る美しい川といえば「五色の川」として世界中で有名なCaño Cristales(カニョ・クリスタレス)が挙げられます。そのカニョ・クリスタレスは最寄りの町から現地へたどり着くまでにかなり時間がかかりますが、このカニョ・サバナは町から車で約30分+徒歩約1kmほど歩けばたどり着けるという近さが魅力の一つです。その為、脚力に自信のない方やお子様でも比較的容易にこの場所へたどり着く事が出来ます。

カニョ・サバナのもう一つの魅力として、前述の有名なカニョ・クリスタレスと比較して川幅が狭く水深が浅い分、流れに乗ってゆらゆらと揺れるピンクや赤・緑などの美しい藻をより間近に見る事が出来る点です。今回訪れた10月は折しも藻が色鮮やかに映えるシーズン中という事もあり、特にピンクのエリアがとても幻想的でした。現地ガイドによるとこれから更にピンクが赤へ変わりその美しさが増すようです。
世界有数の美しい川の一つと言っても過言ではないこのカニョ・サバナの一帯はどうやら太古の昔の地層が露出しているようで、まさに別世界にいるようでした。この場所に立つ事を是非お勧めします。
未知の国コロンビアには私もまだまだ知らない素晴らしい場所が沢山あり、今回この二つを訪れてこの国には究極の未開発観光スポットがまだまだある事を改めて実感しました。
以 上