連載エッセイ574:硯田一弘「南米現地最新レポート」その77 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載エッセイ574:硯田一弘「南米現地最新レポート」その77


連載エッセイ574

「南米現地最新レポート」その77

執筆者:硯田一弘(アデイルザス代表取締役、在パラグアイ)

「2026年2月1日発」
パラグアイの言葉 barrio(バリオ)=地域・界隈 英:neighborhood 葡:vizinhança

日本では強烈な寒波で日本海側は豪雪である一方、太平洋岸は雨不足と報道されていますが、パラグアイでも年明けから雨のない猛暑日が続いていました。

今週は久々に雨が降って樹木も息を吹き返した感がありますが、南米では雨が降ると心配になるのが停電のリスクです。で、今日は珍しくabc color紙電子版で、配電会社ANDEが計画停電のお知らせをするニュースが流れました。

¿Sin luz en tu barrio? ANDE informa dónde realiza cortes programados hoy.(ご近所で停電?ANDEは今日の計画停電の詳細をお知らせします。)

https://www.abc.com.py/nacionales/2026/02/01/sin-luz-en-tu-barrio-ande-informa-donde-realiza-cortes-programados-hoy/

この停電は保守作業のためのもので、地域も時間帯も特定されますので、その時間に電気を使う用事を避ければよいのですが、猛暑の真っただ中で冷房が使えなくなるとガックリします。とは言え、突然停電になっていつ復旧するかわからない事故停電よりははるかにマシです。

日本では滅多に発生しない停電ですが、南米で生活していると停電はかなり頻繁に発生することなので、対策もシッカリできています。

非常用の照明や、煮炊きのための火力の用意など、日本では災害対策として考えられていることが日常発生するので、対応力も南米の方が高いと言えるかもしれません。

日本の豪雪地域では、食糧の備蓄を欠かさないとか、自家発電機を用意する、灯油を備蓄するといった対策が紹介されています。これからは世界のどこででも停電リスクは高まると思いますから、近隣の住民ぐるみで対策を検討するのも大切ですね。

さて、この週末は日本からブラジルに来てアルゼンチンに抜ける客人の対応のために何度か国境に行きましたが、学校の夏休み期間中ということで、エステ商業地区の人出の物凄さは普段以上で、年明けに新しいショッピングセンターが開業したこともあって昨日はあちこちで大渋滞が発生しました。

1965年にブラジルとの架橋Puente de Amistad(友情の橋)が出来た際に、当時のパラグアイ大統領Stroessner氏がパラグアイ側の地域を商業拠点にしようということで、人口もまばらだったこのエリアを、パラグアイ第二の主要都市に成長させたもので、ゲームSim Cityでもここまでの成功例に導き出すのは難しいのでは、と思われるような成功例となっています。

https://www.lanacion.com.py/pais/2025/02/02/aniversario-de-cde-nombre-surgio-antes-del-golpe-para-no-decir-stroessner/

https://www.youtube.com/watch?v=9qnqUXXRwEY

この商都の年間の売上高は30億ドルと言われ、パラグアイGDPの7%を占めるとも言われていますが、地域トップクラスの量販店が店舗の拡張を進めており、この数字は今後さらに大きくなることが予想されています。

昨日の異様な混雑も、近隣のブラジルやアルゼンチンからの買い物客が殺到していることによって発生したもので、これを緩和するために第二の橋は完成しており、ブラジル側の取り付け道路の工事の遅れでまだ全面開通に至っていないものの、こちらの橋が完全に機能するようになれば、商都エステ市の売上は現在の数倍に膨れ上がると予想されています。

https://www.lanacion.com.py/negocios/2026/01/24/puente-de-la-integracion-absorbio-hasta-el-25-del-transito-del-puente-de-la-amistad/

南米南部界隈で最も成長著しいパラグアイへの投資のチャンスをお見逃しなきよう!

「2026年2月8日発」
パラグアイの言葉 junta(フンタ)=会議・評議会 英:board 葡:conselho

一向に解決しない国際紛争の原因があたかも国連にあるかのように発言し、独自の平和組織を立ち上げるとして、1月22日にダボス会議の席で発足が発表されたBoard of Peace(平和評議会、スペイン語でJunta de Paz)の初会合が二週間後に開催され、招待状がパラグアイを含む関係諸国に送付されたようです。

https://www.lanacion.com.py/mundo/2026/02/07/junta-de-paz-remite-invitaciones-para-reunion-inaugural-en-washington/

日本では選挙の話題にかき消されてあまり報道されないトランプ式評議会の内容については以下の記事を参照ください。

https://www.cnn.co.jp/world/35243096.html

1月22日、ダボスでの発足式典に参加したパラグアイ・ペニャ大統領(左端)とアルゼンチン・ミレイ大統領(右から5人目)

1月3日のベネズエラ侵攻のニュースに最初に触れたときは、ようやくベネズエラに平和が訪れる時が来た、と喜んだものの、その後の米国の対応を見ていると、本当の黒幕は以前として強大な力をふるい、臨時大統領と米国が呼ぶ傀儡子を動かして、トランプ氏が欲しがる石油利権と引き換えに権力の地位に居座っているように思えます。

現地の有力新聞の一つで最も反チャベス的であったEl Universal紙は偽政権に蹂躙され、偽政府広報紙に成り下がっている一方、比較的中立性を保っていたEl Nacional紙は1月3日以降は偽政府批判を始めているものの、2月4日のチャベス氏クーデター未遂記念日のことを一面で報じるなど、打破されない現状に怯えながら報道を続けている様子が読み取れます。

一方、現時点で南米で最も自由度が高いと思われるパラグアイですが、23日から始まる学校の新学期に向けて、学用品や給食などの環境改善に政府が取り組む様子が報じられています。 https://www.lanacion.com.py/pais/2026/02/07/cartera-educativa-elevo-puestos-docentes-a-un-historico-3398/

このニュースは学校の教員の数を3割増やしているというものですが、新聞やテレビのニュースに触れる際には、その媒体と政府との距離感についても理解しておく必要があります。ちなみに、上で紹介した記事を掲載したのは、パラグアイの与党代表であるHoracio Cartes氏が運営するメディアLa Nacion紙なので、当然政府の動きを称賛する内容になります。

これまでも何度もご紹介しましたが、パラグアイではカルテス氏と反目する財界の大物であるZuccolillo氏が主宰するabc color紙という新聞があって、ことごとくCartes氏や与党の政策を批判するので、名誉棄損罪等で有罪判決を受けたりしていますが、Zuccolillo氏は米国との関係を後ろ盾にして自身の名誉を回復する動きも見せています。

https://www.abc.com.py/nacionales/2025/08/20/caso-zuccolillo-los-argumentos-que-expuso-la-comision-interamericana/

と、このように、政治というのは誰の視点で見るか?によって大きくとらえ方が変わってみあるもの。日本の衆議院選挙でも、マスコミの報道や、周囲の空気に流されることなく、政見放送などで自分の意見と合っていると思う候補者を確認して投票することが肝要です。

abc color紙もLa Nacion紙も政治的な対立に関する記事ばかりが掲載されているわけではありません。abc紙で今週の特筆すべき記事として、パラグアイでのホテル投資が過熱しており、2025年の平均客室稼働率が70%近くに達しているというものがあります。

https://www.abc.com.py/negocios/2026/02/06/boom-hotelero-en-paraguay-ocupacion-cerca-del-70-y-una-mirada-al-interior/

この記事では、既存のホテルをグループ傘下に巻き込んだHiltonグループや、新たにラグジュアリークラスのJWブランドを投入するマリオットグループの動きを紹介しています。

最後にパラグアイの中立的新聞に掲載された弱冠22歳のアルパ奏者Noelia Colmánさんが日本のホテルで演奏する契約を結んだという明るいニュースもご紹介します。

https://www.ultimahora.com/de-villa-florida-a-las-tierras-del-sol-naciente-queria-la-guitarra-pero-encontre-mi-destino-en-el-arpa

ただ、記事の中で紹介されているJokairo市のホテル、というのが謎であり、彼女が日本で迷わないように、日本で大勢活躍するアルパ仲間の皆さんに助けてもらう機会がでてくることを期待します。

「2026年2月15日発」
パラグアイの言葉 aérea(アエレア)=空気の・航空の 英:aerial 葡:aérea

パラグアイを中心に毎週現地の情報をお届けしていますが、それでも日本にいると「パラグアイ何処?」「南米って北米の真南でしょ?」のような感覚に陥ると思いますので、改めて位置関係をご紹介します。

北中南米で一番大きな都市は1230万人が住むブラジルのサンパウロ。二番目はペルーのリマ970万人、三位メキシコシティ920万人とのこと。これは周辺人口を含まない市の人口なので、実際にはリマよりもメキシコシティの方が大きな街ですが、ご覧のように人口の多い街は北米よりも南米に集中していることがわかります。

パラグアイの首都アスンシオンは市の人口は僅か60万人、周辺人口を含めれば約200万人で24位のクリチバに対抗できるレベル。で、アスンシオンはどこにあるかというと、上の地図ではCuritibaのTの字の下の辺りです。

人口が多くないだけでなく、これまでは往来も少なめでしたので、北米への直行便がなく、北半球とつながっているのはMadridとのAir Europa社の運行する週六便だけでした。

今週、ブラジルの航空会社GOL社がアスンシオンとマイアミを結ぶサービスを開始するとの発表があり、これが実現するとパラグアイへのアクセスが少し改善することが期待されます。https://www.lanacion.com.py/negocios/2026/02/13/asuncion-se-abre-al-mundo-y-se-vuelve-mas-atractiva-tras-la-nueva-ruta-aerea-con-miami/

現在のところ、日本からパラグアイに来るには、北米・欧州・中東などを経由してブラジル・サンパウロかチリ・サンチアゴ、ペルー・リマ、パナマ・パナマ市、アルゼンチン・ブエノスアイレス等からの乗り換えで飛ぶしか選択肢がなかったのですが、もし日本からマイアミに飛ぶ便が出来れば、乗り換え一回でお運び頂けることになるかもしれません。

ちなみに、ラテンアメリカで発着本数が多いのは順番に①メキシコシティ、②ボゴタ、③サンパウロ、④カンクン、⑤リマなのだそうです。

https://www.tiktok.com/@reviewsjch/video/7245711839340809478

メキシコのビーチリゾートであるカンクンがランク入りしているのは驚きで、パナマの方が多いと思っていました。

ブラジル政府はイグアスの滝空港周辺の整備を急ピッチで進めており、リゾート地の空港が重要なハブとして活躍できると見込んでの投資なのかもしれません。

イグアスの滝の空港整備が完成すると、こちらにも北米や欧州からの直行便が運航されることになると思われますので、パラグアイ東部の生活も一層便利になることが予想されます。人の往来が経済を活性化させますので、こうした交通インフラの改善にも益々注目が集まりそうです。

「2026年2月22日発」

日本では寒気が和らいだとされたこの一週間、パラグアイでは猛暑が続き、水曜日には全国的な停電が発生しました。大雨が降ったり突風が樹木をなぎ倒して送電線を切るような局所的な停電には慣れているのですが、今回のケースでは暑さのピークである午後3時過ぎに全国規模で一斉に停電が発生し、二時間近く続いた結果、手術が行われていた病院ではスタッフが携帯電話の懐中電灯機能で執刀を続けたりとか、全国的に交通信号が止まって交通渋滞が発生するなど、いろいろなトラブルが報告されました。

この停電の原因については三日経った現在も発表されていないだけでなく、猛暑が続いた木曜日も各地で断続的な停電の報告が寄せられました。

https://www.abc.com.py/730am/economia-y-mas/2026/02/19/el-apagon-puede-repetirse-pero-aun-no-se-informa-sobre-su-causa-real/

実は先週土曜日=2月14日はバレンタインデーというだけでなく、世界エネルギーの日という記念日であったようです。

https://www.itaipu.gov.py/noticias/energia/itaipu-reafirma-su-liderazgo-en-generacion-limpia-y-renovable-en-el-marco-del-dia-mundial-de-la-energia

と、この原稿を書いている(打っている)最中にも停電が発生。ネット接続も途切れました。停電は一時間ほどで復旧したものの、自宅で使用しているインターネット回線が途切れたままになり、結局日曜日まで持ち越したものの自宅回線は復旧せず、外部の回線を使ってこのレポートを配信する羽目になりました。

実は今週、パラグアイの発電を司る公団の幹部と会合を行ったのですが、パラグアイでは発電と配電が別々の組織によって運営されているために、発電は安定していても配電が不安定であるために今後も停電のリスクがなくならないというレポートが発せられました。

https://www.abc.com.py/730am/economia-y-mas/2026/02/19/el-apagon-puede-repetirse-pero-aun-no-se-informa-sobre-su-causa-real/

日常生活で当たり前のように使っているサービスは、実は多くの関係者たちの不断の努力の結果得られているということを、不便なパラグアイに住んでいてこそ認識し、感謝できるのですが、日本にお住いの皆さんも、便利なインフラは当たり前のもの、という発想でなく、インフラを整備・維持するためには多くの人とカネが必要ということを意識いただくようにしてください。

https://www.lanacion.com.py/negocios_edicion_impresa/2026/02/22/la-ande-encara-millonarias-obras-para-asegurar-servicio-de-energia/

今回の全国停電の原因究明や今後の対策に関する報告書は来週中にまとまるようですが、外国からの投資を誘致するために最も重要なインフラである安定的電気エネルギーほ確保に向けて、しっかりした政策を打ち出してもらいたいと切望します。

また停電のない日本にお住いの皆さんも、天変地異によるインフラカットはいつでもありうることとして考えてください。

https://www.lanacion.com.py/la-nacion-del-finde/2026/02/21/grupo-boy-scout-n-1-abre-sus-puertas-a-nuevas-generaciones/

子供の数が多いパラグアイではボーイ(+ガール)スカウト活動も盛り上がりつつあるようです。スカウト精神の最も基本となる考え方は『備えよ常に』。どんな事態にも対応できるよう、日ごろの備えをしっかりとしておきましょう。

以   上