連載パナマ・レポート70:ルベン・ロドリゲス 2026年02月分 | 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

連載パナマ・レポート70:ルベン・ロドリゲス 2026年02月分


連載パナマ・レポート 70: ルベン・ロドリゲス 2026年2月分

執筆者:Ruben Rodriguez Samudio(早稲田大学講師・パナマ共和国弁護士)

I. 政治

A. 港管理契約の判決
 1月29日、パナマ最高裁判所は、香港企業Hutchison Port Holdings Limited(HPH)の傘下にあるPanama Ports Company(PPC)に運営されているバルボア港(太平洋)とクリストバル港(大西洋)の管理契約は違憲であると判断した。両港のコンセッション方式契約は1997年の法律によって締結され、2021年に2047年までの自動更新が行われたため、2025年に契約に対する二つの違憲訴訟が提起された。

 最高裁判所は、コルティソ政権(2019-2024)は1997年の契約法の解釈は妥当ではないと述べて、自動更新は認められないと判示した。本契約では、更新時に契約の再交渉が条件とされていたにも関わらず、コルティソ政権はPPCが契約を履行しているとして更新を行った。判決文では、自動更新はパナマ国家の利益に反するものであり、1997年契約法を可能とした歴史的背景が既に変化しているほか、契約法の内容はパナマにとって不利益になると明示されている。さらに、1997年の契約法成立時と異なり、2021年の更新時には当時の会計検査院長の副署および国会の承認を得ていなかったため、契約は成立していないと判示した。

 判決確定後、パナマ政府が違憲判決を受けて、新しい契約の交渉のために必要な国際調達が行われる間、港の継続的な運営を確保するため、デンマークのA.P. モラー・マースクグループのAPM Terminalsがバルボア港、Terminal Investment Limitedの傘下にあるTIL Panamáがクリストバル港を一時的に管理すると発表した。ムリノ大統領は、労働者の権利およびクライアントの契約は尊重されることを強調しつつ、違憲判決の可能性を受けて、2025年にコンティンジェンシープランが作成されたと説明した。また、港労働組合は労働者の不安定な状況に対応するため、労働大臣との対談を求めている。

 PPCは判決に否定的な姿勢を示しており、当該判決はパナマ政府による権利侵害に当たり、パナマの法的な安定の信憑性を疑うと主張している。また、中国政府は、判決について、中国企業の利益と権利の保護に必要な措置を取ると宣言したが、執筆時点ではその内容は公開されていない。HPHは契約法についての違憲判決は違法であるとして、パナマ政府に対して投資保護条約に基づき法的措置を取ると述べている。さらに、APM Terminalsに対して、HPHの許可を得ず港の管理を行う場合、責任を求めると通知したことが判明した。これに対してAPM Terminalsは、パナマ政府とHPHの裁判の当事者ではないと強調し、予定通り港を運営すると発表した。

 2月23日、官報での公開により最高裁判決は確定し、政府が直ちに両港の管理を引き受けた。同日、管理引き継ぎチームを担当している元パナマ運河局長アルベルト・アレマン・ズビエタは、バルボア港で開催された記者会見にて、港の管理は平穏に行い、労働者の報酬と労働環境を確保すると述べた。港の一時的な管理により、パナマ政府は国際調達の完了まで1億ドルの利益を受けると予測している。国際調達手続きは最大18ヶ月かかる見込みとされ、違憲と判断された契約法の内容とは異なり、各港の管理を異なる企業に託す予定であることが明らかになった。

ズビエタ氏はPPCの弁護士と対談して今後の流れを説明したが、PPCの取締役は数週間前にパナマから出国しており、企業側の代表者として人事担当者のみが参加したことが分かった。PPCは、今回パナマ政府が港の管理のためにとった措置は不法収用であり、法的措置をとると主張している。ムリノ大統領は、オンラインで公開された国民へのメッセージの中で、判決に基づいて発令された「使用政令」は不法収用に該当しないと説明し、長年にわたって、両港の管理は政府の請求した情報が提供されず、パナマ当局が活動できない地域となっていたと述べた。

 現在、バルボア港とクリストバル港を含め、パナマ運河は5港を利用している。マンザニージョ港(大西洋)はアメリカのSSA Marine、コロン港(Colon Container Terminal、大西洋)は台湾のEvergreen、そしてロッドマン港(太平洋)はシンガポールのPSA Internationalに属するPSA Panama International Terminalに管理されている。マンザニージョ港のコンテナ取扱貨物量270万TEUは国内最大であり、バルボア港と
クリストバル港は合わせて381万TEU(コンテナ取扱貨物量の40%相当)を取り扱っている。

B. カリゾ前副大統領の逮捕
 カリゾ前副大統領は、190万ドルの収入を正当化できないことを理由として、不正蓄財罪の疑いで逮捕された。 1月19日、カリゾ前副大統領は、中央アメリカ議会議員として就任するためコロンビアからグアテマラに向かったが、就任は拒否された。 カリゾ氏は、前副大統領として中央アメリカ議会議員になる資格を持っており、2024年10月に申請したが、同機関のパナマ議員は、就任を認めると司法プロセスの妨害として解釈される恐れがあると説明して、反対した。

就任不可となったカリゾ前副大統領は、無罪を強調し、問題となっている財産は家族の遺産と説明しているが、1月27日に帰国し、トクメン国際空港で逮捕された。

検察庁は2024年9月から様々な調査を行って、11月上旬、カリゾ前副大統領の所有する130万ドル相当の銀行口座、自動車、不動産、その他の財産の差押えを命令した。

II. 外交

A. 欧州租税回避地ブラックリスト

2月17日、パナマは源泉地国課税の下で国外収入を非課税とするため、租税回避地ブラックリストからは除外されないことが分かった。欧州ブラックリストにおける記載は経済的な制裁を意味しないが、国際送金についていくつかの制限が適用され、欧州連合の各加盟国は独自の判断で特定の取扱いを決定することができる。

EUの発表に対して、ムリノ大統領は、パナマをブラックリストに記載していないイタリア、ギリシア、スペインを除き、欧州企業のパナマでの調達参加禁止の継続を発表した。2025年12月、経済財政省は、パナマに本店または支店を置き、労働者を雇い、戦略的な判断を下すといった実質的経済活動の条件を満たさない多国籍企業について消極的収入の課税化、およびペーパーカンパニーの減少を目的とする税務法典改正法案を公開した。

現行法が採用している、海外活動により得られた収入を非課税とする国内源泉所得制度は、競争を生み出すという理由でEUに批判されている。2013年、国内源泉所得制度を廃止する法律が制定されたが、間もなく撤回された。