トリニダード・トバゴ出身の歴史家であり、英国自治領時代の1956年から62年の独立を経て81年に死去するまで首相の地位にあったウィリアムズによる、コロンブスの西インド到達からキューバ革命に至るまでのカリブ海域通史。原著は70年に出版され、本訳書も1978年と2000年に刊行されたものの文庫版。
伝統的な西欧歴史学とは異なる視点からの精緻なカリブ海域通史であるだけに留まらず、カリブ海域が貧困から抜け出すためには地域統合が必要であることを半世紀前から主張し、旧フランス領を含めた全カリブ共同体の設立を説いている、未来志向の歴史書である。
〔桜井 敏浩〕
『ラテンアメリカ時報』2014年春号(No.1406)より
(E. ウィリアムズ 川北 稔訳 岩波書店(文庫) 2014年1月・2014年2月 443頁・430頁 各1,480円+税)