2014年7月8日、ブラジルが招致したワールドカップ大会準決勝で、主催国ブラジルはサッカー王国として最優勝候補に挙げられながらベロオリゾンテでドイツに歴史的大敗を喫した。この屈辱は、ブラジルが初めて招致した1950年ワールドカップでの敗戦-「マラカナンの悲劇」をあらためて思い起こさせた。その時7月16日、新設のリオデジャネイロの20万人が入るマラカラン・スタジアムでの決勝戦でウルグアイと対峙した。引き分けても優勝だったが、ブラジルの勝利を信じていた大観衆はまさかの逆転負けに慟哭した。ブラジル人の脳裏に今も深く刻まれた悲劇を、ブラジル在住のサッカージャーナリストによる迫真のノンフィクション。
10年に及ぶ取材により、南米サッカーの発展史、各国サッカーの特色、この悲劇の背景とその後の関わった選手達の哀しき人生に至るまでを描いており、南米サッカー史や各国サッカーの違いも分かる時宜を得た解説でもある。
〔桜井 敏浩〕
〔『ラテンアメリカ時報』2014年夏号(No.1407)より〕
(沢田 啓明 新潮社 2014年5月 304頁)