幻想と現実が混然と溶け合う『百年の孤独』などの小説でラテンアメリカ文学の頂点の一人といわれる作家の発想力の原点を、すべての著作に目を通し、数々の作品の飜訳を手がけた著者が縦横に解読している。
生来の物語作家であるガルシア=マルケスが文学を志し、一作毎に異なった世界を築き上げる道筋、その背後にあるコロンブスの新大陸“発見”から現代に至る、シモン・ボリーバルからパナマのトリホス将軍なども登場させるラテンアメリカの歴史、スペイン語圏ラテンアメリカ文学史とその魅力、彼の生い立ち、セルバンテスやボルヘス、フォークナーやヘミングウェイなどの影響を与えた作家、『百年の孤独』『族長の秋』から晩年の小説二編に至る作品の解説など、著者ならではの世界的な文豪の素顔の追求である。
〔桜井 敏浩〕
(新潮社 2014年5月 250頁 1,300頁 1,300円+税)