1519年にアステカ王モテクソーマ二世が侵略者コルテスを懐柔すべく贈った素晴らしい工芸品等に始まり、略奪・交易により絵文書を含む実に多くの品々が大西洋を越えて欧州に渡った。それらは戦利品としてばかりでなく、欧州貴族や富裕層の間で流行った珍品収集趣味も相まって各地に散り、やがて多くは塵・がらくたとして姿を消したが、ごく一部は博物館などの収蔵品としてその工芸技術の素晴らしさを垣間見せてくれる。
本書はメキシコ文化人類学者が歴史学の領域に踏み込みつつ、美しいカラー写真でアステカの工芸逸品を、その蒐集・保存に関わった人々のエピソードとともに紹介したものであり、アステカ史、メキシコ史を超えた、歴史の時間と大西洋を跨ぐ工芸品の旅の物語りになっている。
〔桜井 敏浩〕
(山川出版社 2014年1月 232頁 2,800円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2014年秋号(No.1408)より〕