本書は、今や米州で最も人気と発信力のあるジャーナリストにしてオピニオンリーダーの『マイアミヘラルド』紙名物コラムニスト、オッペンハイマー氏の第二弾である。第一弾の『米州救出』(2011年 筆者訳 時事通信社)では、経済発展に焦点をあてたが、本書では、教育に焦点をあて、世界の新興国とラテンアメリカを比較し、ラテンアメリカが採るべき教育戦略につき実に興味深い示唆を与えている。
同氏は、急成長する世界の新興国を取材し、多くの要人インタビューを行い、その進歩と発展の秘密が教育にあることを幅広い観点から明らかにしてゆく。ひたすら教育投資を行い国際競争力でトップとなったフィンランド、母国語の代わりに英語を第一公用語としてグローバル化したシンガポール、高等技術教育を最優先して世界の情報サービス国となったインド、大学教育を外国に開放し発展する共産主義中国、凄まじい教育熱の韓国、知られざるスタートアップの国イスラエル、継続的な技術革新国チリ、教育革新国ウルグアイ等が紹介され、これら新興国の教育、研究投資の驚くべき実態が明らかにされる。
そして、イデオロギーや主義に固執し、天然資源への依存を続け、知識経済の時代に遅れをとっているラテンアメリカに対し、進歩のための12の鍵を提案するのである。
本年夏の安倍総理大臣の歴訪で俄然注目が集まっているラテンアメリカを深く知るために極めて有益な図書といえよう。
〔渡邉 尚人-訳者、在ウルグアイ日本大使館参事官〕
(渡邉尚人訳 時事通信社出版局 2014年12月 355頁 2,800円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕