『フィデル・力ス卜口自伝 勝利のための戦略 -キューバ革命の闘い』(明石書店2012年 https://latin-america.jp/archives/5898 )ではフィデルの幼少時代から1956年にシエラ・マエストラ山中でゲリラ活動を開始し、59年1月にバティスタ独裁政権を倒してハバナに入城するまでが書かれていたが、その姉妹編である本書は1958年8月から59年1月1日のバティスタのドミニカ共和国亡命をもって革命戦争が成就するまでの間の、フェイデルが率いた反乱軍の動きを内部から克明に時系列で記したものである。
武器・兵力でははるかに政府軍に劣る反乱軍が勝利したのは、捕虜や戦場となった地域の住民への配慮、被害を包み隠さず公表することで反乱軍からの発表が政府のそれより真実であると思わせる情報戦術などに因ることを述べ、傘下の指揮官達に出した指令や照会の手紙、演説、戦いの最終段階で行われた政府軍幹部との秘密交渉などの挿話に加えて、指令書、書簡、写真や地図などの一次史料が本文と巻末に付けられており、キューバ革命の指導者自身による貴重な記録である。
〔桜井 敏浩〕
(フィデル・カストロ・ルス 工藤多香子・田中高・富田君子訳 明石書店 2014年10月 516頁 4,800円+税)
〔『ラテンアメリカ時報』2014/15年冬号(No.1409)より〕