1957年に12歳で親と共に鹿児島県からパラグアイへ移住し、一家は未開のジャングルの開拓に挑むが、そこは入植者のほぼ全員が転住を余儀なくされる過酷な土地だった。夢が破れてアルゼンチンに移り、父を失って一家はアルゼンチンに残った母や弟妹、ブラジルに渡った長兄と筆者と分散した。筆者はブラジルで日系大農場の管理の仕事を得るが、労働ビザが無いため農場主の計らいで33歳の時に一時帰国しビザ就労を目指すものの書類が揃えられずブラジルへ戻ることを断念、以後様々な職に就き自動車部品メーカーで南米日系人受け入れの仕事をするなどした後療術院を営んでいるが、子息はパラグアイの永住権を得て日本人会で働いている。
本書は思春期から青年期を南米で移民の子として過ごした筆者の、パラグアイ時代を主に描いた生き様であり、生きることの難しさ、自立することのつらさを語っている。
〔桜井 敏浩〕
(松田 猛 コスモ21 2014年11月 239頁 1,400円+税 ISBN978-4-87795-302-7)