2001年にBRICsの一員としてあらためて注目され、中国の旺盛な買い付けに端を発した世界的な資源需要の高まりにより順風満帆に見えたブラジルだが、13年のサッカー ワールドカップ ブラジル大会を目前におきた大規模抗議デモとその後の通貨下落で、今年の経済成長は大きく落ち込んでいる。このように経済の評価は上下しポルトガル植民地時代からの問題を内在している面はあるが、ブラジル社会の本質はほとんど変わっていない。
本書はブラジルの社会や経済動向を正確に理解するために、「第Ⅰ部歴史編」ではポルトガル人の到達から植民地時代、帝政時代、1889年以降1930年までの共和制時代を通じての国家の形成過程、欧州・日本からの外国移民それぞれの背景と歴史を、「第Ⅱ部現代編」ではヴァルガス大統領登場から軍事政権を経て現代に至る政治の流れとブラジルの人種問題研究の足跡、人種と所得格差の関係を、ブラジル史と地域研究を長年続けてきた3人の研究者が概説している。
〔桜井 敏浩〕
(晃洋書房 2015年3月 249頁 3,200円+税 ISBN978-4-7710-2604-9)
〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕