日本に暮らす外国人の公立小・中・高校生等は7万人超、うちポルトガル語とスペイン語話者が約46%を占めるといわれる。本書はこれら南米につながる子供たちを取り巻く教育環境を探り、日本各地に出現した複数文化の保持が本人たちにとってはもとより地域社会にとっても有益であるとの視点から、教育への行政・学校・支援団体の取り組みを日本語および母国語教育を含めてその課題を論じ、また日本で育ち学んだ南米系の子供たちの体験を語らせることにより、困難を乗り越え次の段階に進もうとする後に続く子供たちへの前向きなメッセージを伝えようとするものである。
第一部「言語文化と教育をめぐるエンパワメントの取り組みと課題」では、多様化する子どもたちと学校教育の現場、言語環境、言語教育と学習支援体制、多文化共生、日本の学校に行っていない子どもたちへの支援、多文化アクターを目指すブラジル・ペルー人学校とそこでの日本語教育、コラムでブラジルならびにペルーと日本の教育事情比較を紹介し、第二部「日本で育った南米につながる若者たち」では子ども時代を振り返った7人の南米系若者が体験と軌跡を述べている。
〔桜井 敏浩〕
(行路社 2014年8月 261頁 2,600円+税 ISBN 978-4-87534-300-4 )
〔『ラテンアメリカ時報』2015年春号(No.1410)より〕