1980年代から90年代にかけて各国で行われた新自由主義改革は、経済・社会構造の変動のみならず国家と社会間の政治的関係にも大きな変化をもたらした。80年代から進んできた民主化、90年代後半の反新自由主義運動の高まり、2000年代はじめからの左傾化などと相まって、各国で様々な形態での政治参加が広まってきた。
本書は、6人の研究者がラテンアメリカ全体での動きと4か国での事例をもって、この多様な政治参加の実態をそれぞれの選挙という既成制度を通じた政治参加、市民参加型制度、非制度的なプロテスト型の抗議運動、外資誘致や規制緩和による天然資源開発とその利益配分をめぐる社会紛争を考察している。
序章で本研究の意図を明らかにし、現代ラテンアメリカ政治における政府による演出としての政治参加を全体として概観、2008~12年の18か国での世論調査データを用いて資源開発と抗議運動をマルチレベルで分析している。具体例ではベネズエラの1998~2010年の「ボリーバル革命」下での投票行動、ボリビアの06年の自治国民投票、ブラジルのサンパウロ市環境審議会の市民参加制度、エクアドルでの反鉱物資源採掘運動の盛衰を取り上げている。
〔桜井 敏浩〕
(アジア経済研究所(日本貿易振興機構)2014年11月 258頁 3,200円+税 ISBN978-4-258-04612-6 )
〔『ラテンアメリカ時報』2015年夏号(No.1411)より〕