現地留学、研究を行った若い研究者の研究成果を発信する本書が含まれるブックレットの本編では、中央アンデス南部高地の農牧複合社会でのフィールドワークで得た、リャマやアルパカ等のラクダ科動物の飼育、先住民共同体での農牧業の実態、クスコ市北方の標高3,000~4,000mで生業を営むパンパリャクタ・アルタと、南東にある標高6,372mのアウサンガテ山の4,800~4,900mの南・東麓で牧畜を主に暮らすチリュカの村に入って調査を基に、牧畜を軸とした土地利用のモデル化などの手法で二つの共同体を比較している。
アンデス高地牧畜の実態調査から、共同体帰属意識、放牧地利用制度の変容、農業に向いていないチリュカの人々の共同体外の耕地へのアクセス、道路整備がこの山奥まで行われるようになってから外界との接触・往来・移住の増大、ずっとカトリック社会だった所にキリスト教系新宗教が入ってきて、それまでの伝統的なカトリズムと癒合した年中儀礼が放棄されるなど、さまざまな社会の繋がりに変化が見えてきたと指摘している。
〔桜井 敏浩〕
(風響社 2014年10月 66頁 800円+税 ISBN978-4-89489-775-5 )
〔『ラテンアメリカ時報』2015年夏号(No.1411)より〕