外国人児童教育問題研究を行ってきた地域社会論研究者と博士課程生に学ぶ日系三世が日本で労働者として働いたペルー人、日本で成長した子弟、帰国した子供、彼らの生活や意識を多面的に明らかにすべく行った調査研究の成果。
第1章では、1990年前後のいわゆる出稼ぎブーム時に来日して以来20年余暮らしてきた労働者8人に、来日の目的、仕事と生活、子供の教育への想いなどを語らせている。第2章では出稼ぎの親に付いて来日した子供たち16人にインタビューし、その成長過程から家族とのつながりの大きなこと、進学と最終学歴への影響要因、将来設計や帰国についてどのように考えているかをみている。第3章は栃木県の外国人児童生徒の25.38%を占めるペルー出身者へのアンケート結果から親の帰国希望と実際、スペイン語教育についての考えを聞き、第4章では来日の経緯と滞在歴、日本語力などから、在住ペルー人の生活と意識を子供の教育、定住志向、国籍により異なる南米出身者の進学率などを集計、分析している。在日ブラジル人についての調査研究事例は多いのに比べ、先行研究の少ないペルー出身者に焦点を当てた地道な聞き取り調査の分析報告書。
〔桜井 敏浩〕
(宇都宮大学国際学部国際学叢書第5巻 下野新聞社 2015年3月 230頁 2,000円+税 ISBN978-4-88286-574-2 )
〔『ラテンアメリカ時報』2015年夏号(No.1411)より〕