1967年からラテンアメリカ各地で取材してきた元共同通信のジャーナリストが、チェ・ゲバラの遺した膨大な文章、関連資料、関係者への取材を駆使して纏めた伝記。医学生時代のラテンアメリカ旅行、カストロ兄弟との出会いとキューバでのゲリラ戦への参加、キューバ革命政権で中銀や工業相などの要職の体験を経て、ラテンアメリカでの革命推進のためにボリビアでの戦いに身を投じ、現地農民の意識との齟齬、過酷な現実と判断の誤りからついに米国CIAの支援を受けたボリビア軍に捕らわれ射殺されるまでの実像を克明に描いている。
もはや伝説となったゲバラの生き様については、賛美する信奉者あるいはキューバ革命を是としない立場から書いた伝記が数多く出ているが、本書は冷静かつ的確に彼の生涯と、その背景にある当時のラテンアメリカの社会情勢と国際関係を分析し実像に迫っており、新書版であるが極めて内容の濃いゲバラ伝になっている。
〔桜井 敏浩〕
(中央公論新社(中公新書) 2015年7月 306頁 880円+税 ISBN978-4-12-102330-8 )
〔『ラテンアメリカ時報』2015年秋号(No.1412)より〕