講演会報告
【日時】2015年11月13日(金)16:00~17:30
【場所】米州開発銀行アジア事務所会議室
【参加者】約30名
【テーマ】ラテンアメリカにおける地域安全保障の動静
【講師】澤田 眞治氏 防衛大学校 教授
地域研究の中で取り上げられることの少ない「安全保障」というテーマで、澤田氏がラテンアメリカ地域の安全保障の特徴について解説された。
①歴史的にラテンアメリカの軍は「国際」政治よりも「国内」政治で存在感を示した。その背景には統治機構の脆弱さと革命運動等の社会不安があったが、民主化後は国際的な任務が中心となった。
②冷戦時代には米国主導でリオ条約による集団防衛が進められたが、他方、ラテンアメリカはキューバ危機を契機に地域主導で世界初の非核地帯条約であるトラテロルコ条約を締結した。
③非核化をめぐる信頼醸成は遅れがちであった経済交渉に波及効果をもたらし、南米南部で地域経済統合が進展した。
④冷戦後の国連PKO活動への積極参加は、国際社会での地域のプレゼンスを高め、域内の信頼醸成をさらに促進するとともに、軍に新しい対外任務を賦与して政軍関係の安定化に寄与した。
⑤1990年代に成立した米州協調体制は、ラテンアメリカ諸国の反米主義や、領土・天然資源に対する主権意識の高まりから生じた亀裂・軋轢の結果、2000年代には安保面でも大きく変化した。
以上の他、近年のブラジルの防衛力整備、ロシアのラテンアメリカ接近、中国の存在感の高まりなど、多様な観点からラテンアメリカの安全保障が語られた。最後に、フロアとの間で、外向きに転じたはずの軍が現在の政治不信に伴うデモの多発で再び内向きになる可能性や、中国がニカラグアで第二運河を建設する理由など興味深い質疑が行われた。
講演者:澤田眞治防衛大学校教授
講演会の様子