2016年3月3日午後3時から、米州開発銀行アジア事務所にて、ビジネス講演会シリーズ「わが社のラテンアメリカ戦略」第2弾として、「高付加価値製品のマーケティング戦略」との演題で医療機器分野を取り上げました。ご講演いただいたのは、株式会社島津製作所の前シマズ・ラテンアメリカ社長(現・同社海外事業開発部分析計測ユニット副ユニット長)の加藤彰彦様およびテルモ株式会社の前テルモ・ブラジル社長(現・同社調達部長)の藤田誠様のお二人です。お二人とも同時期に在サンパウロの日本商工会議所メディカル分科会で委員を務められ、ブラジルの医療機器検査機関への働きかけや医療従事者への日本製機器普及活動、市場開拓で尽力された経験をお持ちで、臨場感のある講演会となりました。約40名の参加を得ました。
講演の要旨は以下の通り。
◆島津製作所 加藤彰彦様
・1980年代にアルゼンチン、ブラジルに駐在事務所設置。1997年にサンパウロに販売店を設立し、ブラジル国内ではリオデジャネイロ、ポルトアレグレ、レシフェに事務所がある。2013年にはウルグアイにも進出した。
・ブラジルでは、国家度量衡・規格・工業品質院(INMETRO)の工業規格承認を取得するために2年を費やした。計測機器の輸入品では初めてで、先行者利益を得てシェアは1位。規格を取るのは大変だが一度突破すれば成功する確率は高くなる。
・ブラジルでのビジネスは多種類の税、通関、労働法等に縛られる。輸入品販売時は、売れる前に付加価値税の支払い義務等があり、出費も嵩むため、資本金を厚く事前準備することが成功の一里塚となる。
・ウルグアイにはロジスティックセンターを置いている。為替の自由度が高く英語が通じる等ビジネスしやすい環境だ。当初は梱包の質が落ちる等の課題もみられたが、順次改善されている。
【配布資料】「島津製作所の中南米事業紹介」
※配布資料はHPイベント>配布資料に掲載されています。会員限定となりますので、ご了承ください。
◆テルモ株式会社 藤田誠様
・ラテンアメリカでは高付加価値製品である心臓血管領域の医療機器、カテーテルの販売に注力している。ブラジル、メキシコ共に心疾患が死亡率の1位というデータもあるが、手術数はブラジルで日本の半分以下、メキシコでは10分の1だ。現状では、市場は小さいが、その分ポテンシャルが大きいとみている。
・医療のトレーニング施設テルモメディカルプラネックスでの現地医師の研修を、JICA、JETRO等と官民連携で行っている。官民連携は相手国の理解を得る上で有効で、コスト面でもプラス。
・各省庁への輸入品の薬事登録にはメキシコで約2年、ブラジルでは約4年を費やした。2012年にメキシコで日本の薬事法が認められるようになり登録が簡単になった。ブラジルでも制度改正の動きが進行中だ。
・ラテンアメリカ諸国の規制は矛盾も多いため、現地日本商工会議所やJICA、JETROと協力して問題点を指摘し、交渉することが大事になる。現地でのネットワークづくりは、慎重かつ確実に、をモットーにしてきた。
最後に参加者と質疑応答が行われ、薬事登録時の米国企業と日本企業の違い、通関時の工夫、ウルグアイに物流拠点を置くメリットとデメリット、人材確保・人材養成等、多岐にわたりお答えいただいた。
【配布資料】「わが社のラテンアメリカ戦略」-第2回-高付加価値製品のマーケティング戦略
※配布資料はHPイベント>配布資料に掲載されています。会員限定となりますので、ご了承ください。
左からテルモ 藤田様、島津製作所 加藤様