『ペルー山村のチーズ生産者 -暮らしの中の経済戦略』 古川 勇気 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『ペルー山村のチーズ生産者 -暮らしの中の経済戦略』 古川 勇気 


ペルー北部アンデス山中のカハマルカ県は鉱業、観光業について酪農が盛んである。スペイン植民者が持ち込んだ搾乳目的の牛飼育から大消費地リマへの輸送コストや保存を考え加工しているが、近年チーズ生産も改良を加えて増加してきている。

本書はフィールド調査により、チーズ生産者と酪農家との関係を、生乳集めからその代金決済方法と掛け売り、前借りの実態、その日暮らしから生産方法の改善等の経済戦略、商売人的側面の増大、チーズ生産者の優位性と両者間の従属関係、組合参加やNGO指導による低温殺菌フレッシュチーズ生産のための設備投資等技術習得の意思の差違などを知ることによって、チーズ生産者の経済戦略を解き明かし、現地社会開発への文化人類学者の関わりの制約を実感した体験を綴っている。著者は東大大学院博士課程で文化人類学を専攻している少壮研究者。

〔桜井 敏浩〕

 

(風響社 2015年10月 57頁 700円+税 ISBN978-4-89489-785-4 )