【日時】2016年5月13日 14:30~16:20
【場所】米州開発銀行(IDB)アジア事務所 会議室
【テーマ】「日系人をグローバルビジネス戦力に」
【講師】
●アルベルト・松本氏、イデア・ネットワーク代表取締役
●アンジェロ・イシ氏、武蔵大学社会学部教授
【出席者】33名
松本氏とイシ氏は、1990年に同じ飛行機で成田に降り立った文部科学省の留学組で、その後、マスメディア、教育現場、さらに在日日系人の支援など日本に留まり活躍されてきた。その経験から、グローバルビジネス戦力としての日系人の可能性について示唆に富む話をされた。
松本氏によると、日系人は母国において必ずしも目立つ存在ではないものの、大きな役割を果たすようになってきた。南米は複雑な社会であり、日本企業は現地のニーズを正しく把握する必要があるが、その際、日本で働いたことのある日系人を活用することによって、日本企業の強みを伝えられるし、現地のニーズが分っているので、投資事業立上げがスムースに運ぶと、ペルーにおける100円ショップ開設を事例に解説された。昨年開催されたパンアメリカン日系人大会に参加された時の見聞も踏まえ、日系人はどの国にもおり接触ポイントとして重要と述べ、中には日本に対して固定観念や偏見を持っている場合もあるが、最近は日系人自身急速に変わりつつあると指摘された。
イシ氏によると、在日日系ブラジル人は、1990年をターニングポイントとして、「デカセギで来日し日本との往復で祖国ブラジルに尽くす」から「日本を拠点としつつ母国との間を往復しながら何らかの活躍をする」ようになった。バブルがはじけて20年、日系ブラジル人は「デカセギ」から「在外ブラジル人」へと呼称が変わり、当初は帰国後多くの人が起業することを目指していたが、最近はブラジルの日系企業をはじめ大手企業に就職する人も増えている。更に、グローバル戦力という観点では、日本語、ポルトガル語の能力だけでなく、英語を含めた3か国語で総合能力を測る視点も必要で、実際に欧米での経験が評価され、例えば韓国系企業の国際ビジネスで活躍する日系人も出てきているという。
講演の後、出席者との間で活発な質疑応答があり、①「日系人」の定義そのものは多様で曖昧である、②日系人は移住した人々によって成り立つ社会の中で揉まれてきているので、どんな政権になろうとも生き延びる力を秘めている、③最近、クール・ジャパンの影響で非日系人の日本への関心が高まりつつあり、日本語を話す非日系人が増えているが、こうした状況を考えると「日系人」を特別扱いはできないが、「日系人」の存在を忘れてはならない、といった興味深い指摘があった。
【配布資料】
「日系人をグローバルビジネス戦力に」
アルベルト・松本 イデア・ネットワーク代表取締役 作成
※配布資料はHPイベント>配布資料に掲載されています。会員限定となりますので、ご了承ください。
アルベルト・松本 イデア・ネットワーク代表取締役
アンジェロ・イシ武蔵大学社会学部教授
会場の様子