【演題】ウルグアイの最新情勢
【講師】田中 径子 駐ウルグアイ大使
【日時】2016年9月21日(水)
【場所】米州開発銀行アジア事務所
2014年11月にウルグアイに赴任された田中径子駐ウルグアイ大使を迎えて、ウルグアイの最新情勢について伺いました。約50名の方にご参加いただきました。
講演の要旨は以下の通りです。
・ウルグアイは人口343万人の小国でブラジルとアルゼンチンという大国の緩衝国として誕生した。対外的な敵が不在の国で、治安も経済も安定している。
・政治は1973~84年の軍事政権後、85年に民政となった。ウルグアイは政府首班の連続再選が禁止されており、バスケス大統領は2005~10年に第一次政権、その後ムヒカ政権を挟んで2015年から再び大統領となった。バスケス大統領は第一次政権時にコンピューターを子供に無償で配布するセイバル計画等を行うなど教育に注力した。第二次政権ではアルゼンチンにマクリ新政権が誕生したこともあり、同国との関係が一気に改善され、サッカーW杯共同開催(下記参照)を共同提案するまでに至った。
・昨年来日して話題になったムヒカ前大統領は、半年に一度、バーベキューパーティーを開催し自分(大使)も招かれている。相手に応じた話題や質問展開に長けている点など、自分が前職で務めた日産自動車のカルロス・ゴーン氏との共通点を感じている。
・経済は13年連続プラス成長で安定している。農業が盛んで、コメの生産量は世界7位。日本の大手外食産業にも輸出している。また、南半球唯一のキャビアの生産国で、対日輸出にも意欲を示す。畜産では牛肉、生乳の伝統的な輸出国で、牛肉の一人当たり消費量は世界一位だ。
・IT産業では同国唯一のグローバル企業ともいえるソフト開発企業GeneXus Consulting社があり、日本法人も設立済みだ。金融業も盛んでドル決済が容易といったメリットがある。
・1987年にフリーゾーンが制定され日系企業も複数進出している。フリーゾーンでは人材を確保しやすい等のメリットはあるが、ウルグアイを拠点に自国が加盟するメルコスール(南米南部共同市場)のブラジルやアルゼンチンに輸出をする場合には関税がかかるので、メルコスール市場をターゲットにする場合にはフリーゾーン外への進出を薦めたい。ウルグアイへの進出日系企業は22社ある。目下のところ商船三井が進める液化天然ガスの再気化事業が最大型案件である。
・日本への牛肉輸出は口蹄疫問題で停止になったが、輸出解禁に向け交渉中である。ウルグアイとは投資協定が締結済みで同国議会の批准待ちで、今後、租税協定締結の可能性もある。今後は日本の都市と姉妹都市を結ぶなど、積極的に友好関係を広げていきたい。
・2030年のサッカーW杯開催地としてアルゼンチンと共同で立候補している。ウルグアイは1930年の第1回W杯の開催国で、優勝国でもあった。2030年は100周年に当たるため選ばれる確率は高いと見ている。
講演の後、出席者との間で活発な質疑応答があり、左派政権が長く続く理由や、ムヒカ前大統領が「世界一貧しい大統領」と称される理由、フリーゾーン内の労使問題、メルコスールでのベネズエラ問題等、様々な質問にお答えいただいた。
田中径子駐ウルグアイ大使
会場の様子