舞台はブラジルの最西部、ボリビア国境の大湿原パンタナールが広がる町コルンバ。パラグアイ川(ラプラタ河の上流の一つ)に主人公の「俺」の眼前で小型機が突っ込む。パイロットの若者は死んだが機内にはかなりの量のコカインがあり、俺は腕時計とともに盗み出す。コカインのごく一部を町のボリビア人の自転車店主に売らせるが、欲を出した店主のせいで逆にギャングに6万ドルもの借金を背負わされ支払いを迫られる。俺は何とか金を工面すべく、恋人の警察の屍体保管所主任とつるんで町の富裕な畜産業者であるパイロットの両親に偽の遺体引き渡しと交換に金を取ることを思いつく。その成否は...?
ブラジルの脚本家でスイスに居住する著者のミステリー小説でポルトガル語で書かれたが、ドイツ・ミステリー大賞(飜訳作品部門)で第一位になったといい、本書もドイツ語訳本からの重訳。
〔桜井 敏浩〕
(猪俣和夫訳 早川書房(文庫)2016年1月 271頁 700円+税 ISBN978-4-15-181551-5 )