2004年に同じ編者による『エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグアを知るための45章』のうちから、ニカラグアのみを最新のデータによって大幅に拡充したエリア・スタディーズのラテンアメリカ19冊目。
「Ⅰ歴史と自然環境」8章から始まり、「Ⅱ独裁政治から革命政権」8章ではソモサ独裁とサンディニスタ革命、1990年までの革命政権の光と影を、「Ⅲ変貌を遂げる政治と経済」9章ではチャモロ政権発足から2006年のサンディニスタFSLN党のオルデガ大統領再登場に至るまでと中道左派とみなす外交、香港企業によるニカラグア運河構想とコロンビアとの海洋境界紛争、「Ⅳ人々の暮らしと社会の姿」13章では、先住民、ジェンダー、家族、国際労働移動、教育、治安、医療事情などとコラム3本を、「Ⅴ豊かな芸術の世界」9章では詩、文学、造型芸術、素朴画、革命音楽家を、「Ⅵ復興と成長に向けた国際社会と日本の援助」8章ではニカラグアで唯一の日本企業であり、最大の民間企業・輸出企業となった矢崎総業、90年以降本格化し道路や医療など計画的にかつ継続して供与されている日本のODA、火山国で地震やハリケーン等自然災害が多く、中米で最下位の経済水準で保健・医療体制が遅れているニカラグアでのコミュニティ活動にも触れている。
〔桜井 敏浩〕
(明石書店 2016年6月 306頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-4362-4 )
〔『ラテンアメリカ時報』2016年秋号(No.1416)より〕