小倉百人一首の日西対訳版。「百人一首」は日本文学のなかでも最も影響力をもった古典の一つとされている。これら古(いにしえ)の詩歌に流れる赤裸々な感情は日本人の本来の心を写し出しており、その意味で日本人の心や性(さが)を知る最良の入門書と言っても過言ではない。
現代の日本人にとっても古い時代の日本語を読むのは苦手という方も少なくないであろう。自国の言語の古典を異なる言語で読み、異なる文化のプリズムを通して、新たな視点で自らの文化を見直すというのも実に興味深い試みではないだろうか。
日本語とスペイン語を対面バイリンガルに表し、見開きで一首を味わえるようになっている。詠み人の歌仙絵が趣を添えている。日本語ページには原文、ローマ字表記、現代語訳と注、スペイン語ページには詩的表現のスペイン語訳および注が入っている。さらに、京ことばのプロ朗読者による百人一首朗詠、スペイン語監修者のスペイン語朗読CDが付き、日本語スペイン語両言語で鑑賞できる。
スペイン語学習教本であると同時にスペイン語圏の日本古典文学研究書でもある。
〔訳者-伊藤 昌輝〕
(伊藤 昌輝編訳 エレナ・ガジェゴ監修 大盛堂書房 2016年10月 221頁 1,800円+税 ISBN978-4-88463-119-2 )
〔『ラテンアメリカ時報』2016/17年冬号(No.1417)より〕