1997年以来キューバ音楽に魅せられて通い詰めている著者の『キューバ音楽紀行』(東京書籍 2000年)に続く、キューバの各種音楽とそれにともなう舞踊、楽器などをジャンル別にわかりやすい解説書。
2000年に日本でも上映されてキューバ音楽への注目度を世界的に高めた映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』の年配ミュージシャンの楽団が主に演奏していたのは伝統音楽の「ソン」であるが、このほか「ダンソン」もあり、その他アフリカ伝来の宗教音楽・舞踏やスペイン直系の農民音楽プントなど様々なジャンルがある。著者は精力的にそれらの楽器、演奏されている場所を求めて各地を訪れ、音楽家たちとも交流している。後半の65ページはキューバに特に音楽を聴きに渡航したいという人のための旅行事情のガイドになっており、最終章「今後キューバはどう変わるか」では、2015年の米国との国交回復による外国人観光客の急増、砂糖・ラム酒・タバコ・ニッケルに代わる外貨獲得源としての医師等人材派遣、海外在住者からの送金とならぶ観光産業の重視、マリエル港の経済特区開発の進展、物資不足から修理屋が幅をきかせていた時代から消費社会へ移行しつつありゴミの量が増えてきたこと、生活難は米国の経済封鎖のせいとしてきた政府の主張が通用しなくなったフィデル・カストロ後のキューバの展望についても言及している。
〔桜井 敏浩〕
(彩流社 2016年12月 213頁 2,000円+税 ISBN978-4-7791-2266-8 )
〔『ラテンアメリカ時報』2016/17年冬号(No.1417)より〕