講演会のご報告「時代を超え地場に定着する企業群」シリーズ第6回:「中南米インフラ市場に食い込む日本工営:現状と今後の狙い」(2017年3月8日(水)開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

講演会のご報告「時代を超え地場に定着する企業群」シリーズ第6回:「中南米インフラ市場に食い込む日本工営:現状と今後の狙い」
(2017年3月8日(水)開催)


【演題】Increasing Infrastructure Market Share in Latin America
【日時】2017年3月8日(水)15:00~16:30
【場所】米州開発銀行アジア事務所
【講師】Kevin Tynes (ケビン・タインズ)日本工営(株)執行役員・中南米統括事業
部長兼中南米工営㈱取締役会長
【参加者】約50名

タインズ氏は、日本工営で長年中南米の事業を統括されてきた経験を踏まえ同社の国際エンジニアリング・コンサルタント事業について、①日本工営の紹介から始め、②ラテンアメリカにおける活動、③成功の鍵、④将来計画の4つの観点から具体例を交え分かり易く説明された。

①日本工営は1946年に設立された日本最古のコンサルタント会社で、現在、日本最大の規模を誇る国際エンジニアリング・コンサルタント企業として、これまで5,000以上のインフラ・プロジェクトを世界156カ国で展開してきた。事業分野はエネルギー、運輸、水資源、都市・公共事業等と広範囲にわたる。

②ラテンアメリカでの事業は1970年代に始まり、当初は100%日本のODA事業を対象とし、日本人スタッフによる「パラシュート」展開であった。しかし、1990年代になり、言語と文化の違いも災いして事業継続性の面での課題が明らかになったため、大胆に発想を変え、2002年に現地子会社を設立して、より現地に根を下ろしたアプローチに切り替えた。これにより、文化・言語の現地化を図ると共に、日本のODAばかりでなく、世界銀行やIDBなどの国際機関のプロジェクトや地元の公共事業など、広範な対応が可能となった。現在、ラテンアメリカにはパナマの地域統括本部を含めて事務所が10カ所あり、これまで218のプロジェクトを手掛けている。

③2003年以降、ラテンアメリカ事業は順調に業績を伸ばしている。2016年末現在の現地雇用者数は475人、同年の売上高は約400億円に上る。成功の要因は、ⅰ)綿密なロードマップ(計画)の立案・実行、ⅱ)選択的な入札対応(入札公示前から準備に着手することで、落札率を大きく伸ばしている)、ⅲ)市場実態に合ったマルチ・ドメスティック戦略の採用(現地雇用475人の95%は現地ないし地域スタッフ)、ⅳ)日本のODA以外への進出(PPP、コンセッション等)などである。

④今後の方向としては、ⅰ)引き続き日本のODAはフォローするが、ⅱ)世界銀行、IDBなど国際金融機関のファイナンス事業への参加、ⅲ)コンセッション事業への参加、ⅳ)進出が遅れているメキシコ、アルゼンチンなどへの事業拡大、ⅴ)再生可能エネルギー、都市開発、大量輸送機関などの新たな事業分野への業務拡大である。

英語による約1時間の講演後、石油・ガス部門やその他インフラ・ビジネスの有望国の見通し、安倍政権の成長戦略のインフラ輸出との関係、他国企業(スペインや中国)との競合、ニカラグア第二運河の実現性、汚職リスクへの対処など、参加者との間で活発な質疑応答が成された。

【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)

「Increasing Infrastructure Market Share in Latin America」(PDF)
Kevin Tynes
日本工営(株)執行役員・中南米統括事業 部長兼中南米工営㈱取締役会長 作成


Kevin Tynes氏

会場の様子