ラテンアメリカにおいて、かつては後れている経済セクターと見られていた伝統的農業部門が、資源ブームが一段落した後のラテンアメリカ経済の成長を牽引する部門として見直されてきた。先進国向けに生鮮野菜や果物の輸出が増大し、国内でも新興中間層向けのスーパーマーケットやフードサービス向けの供給が増えており、これまでの農業生産・輸出動向だけではその実情、変化が解明出来なくなっている。
本書は、生産・加工・流通といった経済活動の一連のつながり、すなわちバリューチェーンが近代農業部門では各部門を担う経済主体同士の関係が強まる統合傾向が目立ってきたことに着目し、著者が長年調査研究してきたペルーの生鮮アスパラガス等の青果物やアボカド等の果物の輸出拡大、ジャガイモの国内流通の変化、ブラジル・メキシコ・ペルーのブロイラー産業の比較とペルーでの特徴を事例として、農業・食料部門におけるバリューチェーンの統合が、生産性の向上と付加価値の増大につながることを指摘している。
〔桜井 敏浩〕
(アジア経済研究所 2017年3月 200頁 2,500円+税 ISBN978-4-258-04627-0 )
〔『ラテンアメリカ時報』2017年春号(No.1418)より〕