『コロンブスの不平等交換 -作物・奴隷・疫病の世界史』 山本 紀夫 - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

『コロンブスの不平等交換 -作物・奴隷・疫病の世界史』  山本 紀夫


 「コロンブスの交換」は、新大陸到達と同時に始まったトウモロコシ、ジャガイモなどの新大陸産品の欧州への伝播と、旧大陸からの牛馬、羊等の家畜や小麦、砂糖キビ、コーヒー等の持ち込みを指す。一見平等なやり取りと錯覚しがちだが、新大陸の人口を激減させた疫病の持ち込み、砂糖キビ生産のために連れてこられてその後長く続いた奴隷制等も挙げて、著者はコロンブスの“発見”以降に持ち帰られ黄金より価値をもたらした新大陸原産の作物をはじめ、一方が得るところ大であった不平等な交換と断じている。
 農学を修め民族学に転じ主にアンデス高地で調査を積み重ねてきた著者だけに、トウモロコシとジャガイモが採集から栽培され、数千年かけて改良されて重要な文明の基となったこと、それが欧州、すぐ後にアフリカやアジアにまで伝えられ、現在に至るまで世界を救った食料になっていることを詳述している。反対に、当初から砂糖生産の適地を求めて持ち込まれた砂糖キビは、西インド諸島、ブラジル東部等で大規模に栽培されるようになったが、一緒に持ち込まれた疫病で人口が急減した先住民に代わる労働力をアフリカ西部から大量に拉致してきた奴隷に課した。新大陸征服を可能にした馬と牛の牧畜開始は、パンパや北米草原で先住民から土地を奪うことになった。新大陸から逆に梅毒などがもたらされているが、天然痘、はしか、インフルエンザといった疫病はほとんど一方的に旧大陸からの伝播が人口に壊滅的被害を与えている。
 こうしてみると、等価交換をいう意味合いを与える「コロンブスの交換」は、新大陸原産の作物への長年の先住民の栽培の改良や貯蔵の工夫等があったことを評価せず、コロンブスの「新大陸発見」には大きな負の側面があったことを指弾している。
                                 〔桜井 敏浩〕
(KADOKAWA(角川選書 579) 2017年1月 246頁 1,700円+税 ISBN978-4-04-70359208 )

 〔『ラテンアメリカ時報』2017年春号(No.1418)より〕