【演題】中米・カリブ諸国の最新情勢とIT事情
【日時】2017年4月27日
【場所】米州開発銀行アジア事務所
【講師】
(1)外務省中南米局 橋場健 中米カリブ課長 「中米及びカリブ諸国の今」
(2)国際社会経済研究所 原田泉 情報社会研究部部長・主幹研究員、
小泉雄介 同主幹研究員
「キューバ・ドミニカ共和国のIT事情」
【参加者】46名
外務省中南米局の橋場健課長と、国際社会経済研究所の原田泉氏および小泉雄介氏をお迎えし、中米・カリブ諸国の最新情勢とIT事情について伺いました。講演の要旨は以下の通りです。
(1)「中米及びカリブ諸国の今」
外務省中南米局 橋場健中米カリブ課長
・中米統合機構(SICA)は地域の経済社会統合を目的に’91年に設立。加盟国は中米8カ国(エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ドミニカ共和国、ニカラグア、パナマ、ホンジュラス、ベリーズ)。域内関税と対外共通課税は5カ国で、税関統合計画はホンジュラス-グアテマラ間で進行しているが、全体として加盟8カ国が一枚岩になっているとは言い難い。以前は貧しい国が多く日本は経済協力を行ってきたが、各国の経済発展に伴い今後どう関わるかは課題となっている。
・14の小国が加盟するカリブ共同体(カリコム)は1973年に設立された。最も豊かなバハマと最貧国ハイチとの格差は大きい。この共同体の結束力は比較的強く、国際場裏での存在感も高まっている。第1回日本・カリコム首脳会合が2014年にトリニダード・トバゴで開催された。これには安倍首相も出席し、カリコム各国首脳との意見交換を行った。
・本年3月にキューバ・ハバナで開催されたカリブ諸国連合(ACS)閣僚会議には薗浦外務副大臣が出席し、日本のオブザーバー国入りが承認された。
(2)「キューバ・ドミニカ共和国のIT事情」
国際社会経済研究所 原田泉情報社会研究部部長・主幹研究員、小泉雄介主幹研究員
・本年2月初めにドミニカ共和国とキューバを訪問し、ICT関連のビジネス・ニーズや国民登録システムなどの現状を調査した。
・キューバは2015年に米国との国交回復を果たしたが、今でも米国からの入国制限があり、日本人も厳しいチェックを受けた。中国との経済関係は強化され、空港の顔照合やカメラは中国製。韓国とは外交関係はないが貿易は行っている。観光客は増加し2016年には400万人を突破。日本人旅行者数は約22千人。
キューバでは16歳以上にIDカード取得義務がある。社会主義国のため国民統制の手段として住民登録・IDカード制度は完備している。顔照合ソフトはキューバ製。ソフトは国営企業で賄いたい意向が強く、カメラなどの機器類での協力を希望していた。
・ドミニカ共和国は貧富の差や高失業率が課題。米国から送還された元移民の銃器犯罪が頻発しているが、凶悪犯罪は少ない。都市部の交通渋滞も課題。国民IDカード兼選挙人カードはICチップ付で、運転免許証、納税者番号も同じ番号に統一されている。サーベイランスシステムのニーズが高い。
・最貧国ハイチと陸続きのため不法入国者が多い。現政権は低賃金労働力としてのハイチ移民の受け入れに積極的。国際移住機関(IOM)はそのハイチ移民のための2種類のカードを作ろうとしているが、成否は不明。
講演の後、出席者との間で質疑応答があり、ドミニカ共和国の大統領選挙時の投票機器の不備について、ドミニカ共和国におけるハイチ移民の実情、中米諸国と米国の貿易等について意見交換がありました。
【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)。
■「カリブ共同体(カリコム)概要」(PDF)
■「中米統合機構(SICA)と日・中米関係」(PDF)
外務省 中南米局 作成
■「キューバ・ドミニカ共和国のIT事情」(PDF)
主幹研究員 原田 泉氏
主幹研究員 小泉雄介氏 作成
外務省中南米局 橋場 健 中米カリブ課長
(株)国際社会経済研究所 原田 泉 情報社会研究部部長・主幹研究員
(株)国際社会経済研究所 小泉 雄介 主幹研究員