【演題】投資先としてのチリの魅力は?
【日時】2017年7月5日
【場所】フォーリン・プレスセンター
【講師】グスタボ・アジャレス駐日チリ大使
【参加者】約70名
グスタボ・アジャレス駐日チリ大使をお招きし、チリの情勢と魅力、今後の見通しについてご講演いただきました。講演の要旨は以下の通りです。
・チリは人口が約1800万人。小国ではあるが国際貿易の面では競争力があり、経済パフォーマンスは南米でトップクラス。南米で唯一のOECD(経済協力開発機構)加盟国でもある。投資はチリ経済の動力軸であり、2007~2016年で約200億ドルの投資を受け入れた。司法国家であり、諸制度が整備され、マクロ経済の高い安定性など、先が見通せることがその要因として挙げられる。
・太平洋同盟加盟国間の制度整備は予想以上のスピードで進展しており、同盟としては最も成功したケースと言える。メンバー国のチリ、メキシコ、コロンビア、ペルー4か国の人口は合わせて約2億1700万人にのぼり、大市場の条件を満たしている。加盟国の共通点は、共に開放経済を国是としている点だ。中でもチリはFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を多くの国と締結するなど、模範的な位置にある。
・チリの主要産業の一つである食品分野は、サーモン、豚肉、ワインなどを世界各国に輸出している。エネルギー分野では、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーに力を入れている。観光では、海外からの訪問客は年間約50万人にのぼる。日本人にはパタゴニアの人気が高い。ホテルや空港の近代化など、この分野も大変有望な投資ターゲットだ。また、チリ国民の教育水準は高く、様々なテーマで日本の研究・教育機関との交流が活発化している。
・チリの課題は生産性・イノベーション・成長である。米国のTTP(環太平洋経済連携協定)離脱表明や英国ブレグジットの影響も懸念している。商品市況、特に銅の価格が急落したことが一因で、経済成長率は好調時の年率7%を維持できない状況にある。また、対GDP(国内総生産)比の財政赤字の悪化により、S&Pによる格付けも下がった。2017年の成長率予想も2%程度にとどまっている。今後それを押し上げるためにも、鉱業分野以外の産業の育成が急務である。
講演後、出席者との間で質疑応答があり、今年11月の大統領選の動向、今後注目できる工業製品、「中所得国の罠」にはまらないための成長具体策、(米国抜きの)TPP11に対するチリの見解、太平洋同盟の意義と今後の展開、日本チリ外交樹立120周年記念行事など、様々な質問にお答えいただいた。
【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)。