16の独立国と英・米・仏・オランダ領の島々からなるカリブ海域諸国に、本書ではメキシコのユカタン半島沿岸、中米のベリーズ、ガイアナ、スリナム、仏海外県のギアナも対象に加えて17人の学界、ビジネス界、現地在住者を動員し70章の解説を纏めた、ラテンアメリカに関わる20冊目のエリア・スタディーズ シリーズ。
カリブ海世界を、地理・自然・民族から、コロンブスの到達とその後の植民地としての歴史と独立の過程、多民族・多宗教の共存、クレオール文化と欧米のカリブ海移民世界、祭・音楽・文学・芸術に見る文化の融合と混交による文化生成などの歴史と文化、現代の政治、経済社会開発、グローバル化する産業に至るまで、カリブ海世界の今を紹介しており、最後に日本の外交、経済協力関係にとってもカリブ海世界との交流は大事であることを明らかにしている。
美しい海浜とクルーズ船による観光、租税回避地、レゲエはじめラテン音楽でしかあまり知られていないカリブ海世界を、日本語で纏めた類書は極めて少ない中で、その理解を助ける有用な企画である。
〔桜井 敏浩〕
(明石書店 2017年6月 352頁 2,000円+税 ISBN978-4-7503-4534-5 )
〔『ラテンアメリカ時報』2017年夏号(No.1419)より〕