【メキシコ・日本アミ-ゴ会】2017年メキシコ歴史文化講演会 『メキシコ日系移民の歴史とその活躍(全4回)』(2017年8月24日、10月24日、11月22日、12月7日開催) - 一般社団法人 ラテンアメリカ協会

【メキシコ・日本アミ-ゴ会】2017年メキシコ歴史文化講演会 『メキシコ日系移民の歴史とその活躍(全4回)』
(2017年8月24日、10月24日、11月22日、12月7日開催)


メキシコ・日本アミ-ゴ会は日墨の友好親善の促進とメキシコの理解を深める目的で例年、「メキシコ歴史文化講演会」を開催しています。
2017年は、メキシコ日本移民120周年記念行事の一つとして、「メキシコ日系移民の歴史とその活躍」を主テ-マに、4回シリ-ズの講演会を下記の通り開催します。皆さまお誘い合わせのうえお出かけください。

☆開催概要(各回共通) ☆
【日時】2017年8月24日、10月24日、11月22日、12月7日
    18:00~20:00 (開場17:30) (講演90分+質疑応答30分)
【会場】メキシコ大使館別館5階「エスパシオ・メヒカ-ノ」
   ☆アクセス:https://embamex.sre.gob.mx/japon/index.php/ja/2016-04-12-08-30-47
【定員】先着順100名 / 参加費:無料
【主催】メキシコ・日本アミーゴ会 / 協力:メキシコ大使館
【申込】メキシコ・日本アミーゴ会 ( info@mex-jpn-amigo.org ) 宛てメールで「講座名(第○回)・参加者氏名(フリガナ)・メールアドレス・所属(アミーゴ会員or講演会案内の入手先)」を明記して直接お申し込み下さい。複数参加の場合には全員のお名前を明記してください。定員超過の場合のみ、その旨をお知らせします。

☆第1回:8月24日(木) 18:00~20:00 ☆

【演題】「メキシコの日系移民の変遷と史的意義」
【講師】柳沼 孝一郎(やぎぬま こういちろう)
【略歴】メキシコ国立自治大学哲文学学部大学院修士課程修了-メキシコ近現代史専攻。
専門はメキシコ近現代史・ラテンアメリカ地域文化研究。現在、神田外語大学国際コミュニケーション学科教授(副学長)。放送大学千葉学習センター客員教授。
著書に、『インディアスの迷宮 1492-1992』(共著、勁草書房)、『グローカリゼーション 国際社会の新潮流』(共著、神田外語大学出版局)、『現代メキシコを知るための60章』(分担執筆、明石書店)、『季刊iichiko特集:メキシコの文化学』(共著、文化科学高等研究院出版局)、『スペイン語がびっくりするほど身につく本』(単著、あさ出版)、『環太平洋の言語と文化』(共著、神田外語大学出版局)、訳書に、『ユネスコ世界遺産(全13巻)』(共訳、講談社)、『ガルシア=マルケス ジャーナリズム作品集』(共訳、現代企画室)、『ホセ・マルティ選集 共生する革命』および『ホセ・マルティ選集 飛翔する思想』(共訳、ともに日本経済評論社)など多数。

【要旨】大航海時代にヌエバ・エスパーニャ(現メキシコ)のガレオン船「サン・フランシスコ号」が御宿の海岸に漂着、フィリピン総督ロドリゴ・デ・ビベロ以下317名は地元民から手厚い救援を受け、これを機に日本とメキシコの交流が開始され、支倉常長慶長遣欧使節のメキシコ派遣とつづき、明治期の「日墨友好通商航海条約」の締結、その後に国家事業として実施された「榎本武揚メキシコ殖民団」は日本人の中南米移住の先駆けとなった歴史的な移住でした。戦後期では、メキシコ国連大使の尽力による対日講和条約の締結および日本の国際社会への復帰、日墨両国の友好関係の促進を目的とした「日墨協会」の設立、両国の文化交流の場「日墨文化会館」の建設、ノーベル文学賞詩人オクタビオ・パス(当時は二等書記官)の東京着任、「日墨文化協定」の調印、64年の東京オリンピックに次ぐ、68年のメキシコ・オリンピックを機に発足された「メキシコ日本商工会議所」、「日本メキシコ通商協定」の締結、両政府の交換留学制度「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」そして「日墨経済連携協定」(EPA)を経て現在にいたっています。
すべてが日本とメキシコの友好の証です。日墨友好400年の「二つの文化を一つの心で」の歴史の記憶をたどります。 

☆第2回:10月24日(火)18:00~20:00 ☆

【演題】「チアパスに入殖した榎本移民と榎本武揚について」
【講師】山本 厚子(やまもと あつこ)
【略歴】慶応義塾大学文学部史学科卒。スペイン国立マドリッド大学(現コンプルテンセ大)
留学。ノンフィクション作家。元東京農業大学・早稲田大学講師。日本ジェンダー学会理
事。著書に、『榎本武揚』、『野口英世は眠らない』、『パナマ運河百年の攻防』ほか多数。
新聞・雑誌などにラ米地域の女性関係の記事多数あり。

【要旨】ラテンアメリカ地域に最初に移住した日本人は、メキシコの南端・チアパスに渡った36名の若者であった。広大な官有地を払い下げ契約し、15年年賦で土地を購入し、自由渡航者6名、契約移民29名がエスクイントラのアカコヤグアに入殖した。ここに、ラ米地域への日系移民の歴史の第1ページがはじまったのである。
このグループを派遣したのは、榎本武揚であった。幕臣の彼は若い時から「殖民・移住」という考えを芽生えさせていた。オランダ留学、ロシア公使として赴任していた機会に、列強の殖民政策を目にして、日本の将来の「国利民福」の思いを強くしていった。
松方内閣の下で外務大臣に就任した榎本武揚は、大臣官房に移民課を設置し、海外への移住可能な場所を調べさせ、メキシコのチアパスが候補として挙げられた。大臣就任期は短かったので、自ら殖民協会を作り、さらに移民会社を設立し、資金難を押して、私財を投入して「エノモト移民」をメキシコに送ったのである。
入殖民たちは、紆余曲折を経て、歯を食いしばって土地に根づいていった。メキシコ革命と太平洋戦争がなければ、違った歴史が展開されたにちがいない。
今年で120年を迎える日系移民史の原点を、改めて思い起こし、将来の日本とメキシコ、ラ米地域との関係を、今一度考える機会になればと思う。

☆第3回:11月22日(水) 18:00~20:00 ☆

【演題】「戦後メキシコ日系社会の動向と変容
~日本のパートナーとしてのメキシコ~」
【講師】浅香 幸枝(あさか さちえ) 
【略歴】南山大学外国語学部准教授、同ラテンアメリカ研究センター研究員。博士(学術:名古屋大学大学院国際開発研究科)。現在、日本移民学会理事(四役:事務局長)、(公財)海外日系人協会理事。外務省「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」委員。
【主要著書】『地球時代の日本の多文化共生政策―南北アメリカ日系社会との連携を目指して』明石書店2013年初版(2017年第2刷)。『地球時代の「ソフトパワー」―内発力と平和のための知恵』(単編)行路社 2012年。『地球時代の多文化共生の諸相―人が繋ぐ国際関係』(単編)行路社 2009年。

【要旨】2017年はメキシコへの日本人移住120周年である。メキシコは日本と最初の平等条約を締結しただけでなく、2005年に経済連携強化のための協定を締結発効した。このような良好な外交関係を背景に、北部のマキラドーラには日系の工場群があり、メキシコの中央高原にも日系自動車産業が集まっている。こうした環境下で現地に根付いている日系社会が日系企業の進出によりどのような影響を受け、どのような協力関係にあるのかを明らかにする。
先行研究により現状を把握した後、外務省領事移住部の作成した『海外における邦人及び日系人団体の一覧表』および日系社会のリーダーへのインタビュー調査によって、日系企業進出に伴う日系社会の変容を人の移動と異文化理解の視点から考察する。
親日のメキシコ社会を支える日系社会の役割と日本との関係、またメキシコと係わる日本人のメキシコとの付き合い方を日系社会の経験から学びたい。不透明な国際社会において、信頼できる人のネットワークは、世界に平和と安寧をもたらす基盤だと考える。

☆第4回:12月7日(木) 18:00~20:00 ☆

【演題】「私がメキシコから学んだこと」
【講師】黒沼 ユリ子(くろぬま ゆりこ)
【略歴】ヴァイオリニスト。高校1年で日本音楽コンクール第1位特賞。18歳でヨーロッパへ留学し1962年プラハ音楽芸術アカデミーを首席卒業。以来、国際的なソリストとして世界各地で活躍。と同時に1980年にはメキシコ市南部のコヨアカンに弦楽器のための「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」を開設し、「日本・メキシコ友好コンサート」などを通じて、両国の友好の絆を音楽によって一層強いものにする。現在は千葉県御宿町に帰国して、そこに「黒沼ユリ子のヴァイオリンの家・日本メキシコ友好の家」を創設し活動中。
メキシコからトラテロルコの鷲賞、アステカの鷲勲章、日本からは外務大臣表彰、国際交流基金奨励賞、大同生命文化財団・地域研究特別賞、ソロプチミスト日本財団・千嘉代子賞、旭日小綬章などを受賞。著書に、『メキシコからの手紙』、『メキシコの輝き』(共に岩波新書)、『アジタート・マ・ノン・トロッポ』(未来社)、『ドヴォルジャーク』(リブリオ出版)、『ヴァイオリン・愛はひるまない:プラハからメキシコへ』(海竜社)などがある。

【要旨】拙書『メキシコからの手紙』に表したように、私は1972年から2年弱の間、イダルゴ州のワステカ地方で暮らした。シエラ・マードレ(山脈)の奥地での生活から、これまで自分がこの丸い地球をいかに「西洋文化」というメガネを通してのみの、ほんの一部分しか知らなかったかということを認識させられた。殊に16世紀に武力征服された折に山間部に住んでいたメキシコ人たちの末裔が、今日の現代文明社会からはとり残され、それとはほど遠い生活を続けているのを目のあたりにし、大きなショックを受けた。それは人類が作り上げた悪しき「植民地主義」という名のもとでの、言語道断の差別による搾取の正当化から生まれた不平等社会を目の前にした驚き、とも言えよう。そしてこの構図が、今日の世界地図全体の中にも広大な部分を占めており、パワーバランスの不均衡が「あたり前」として存在することにより、「富める側」にある日本という国も存在していることを私たちは自覚せねばならないと思う。
120年前から始まった日本人のメキシコ移民の歴史は、彼らがいかにこの構図の中から這い上がるために刻苦勉励に勤めたかの歴史であって、その結果において、今日の立派な日系人社会が築かれたかを認めなくてはならないだろう。現代メキシコ社会における日本人への一般的なイメージについて語り、小石を1個ずつ積み重ねるような地道な努力で「日系移民」の方々が築かれたように、私たちもまた今日、両国の相互理解を深め、友好関係の絆をさらに強くする努力をしなければならないと思う。