【日時】2017年9月11日 15:00~17:00
【場所】フォーリンプレスセンター
【講師】
JICAメキシコ事務所所長 篠山 和良氏
JICAキューバ 小澤 正司氏
JICAブラジル事務所所長 斉藤 顕生氏
JICAボリビア事務所所長 立原 佳和氏
JICAパラグアイ事務所所長 吉田 英之氏
【参加者】約100名
上記5人の講演に先立ち、国際協力機構(JICA)中南米部長竹内氏より、また最後に中南米部次長吉田氏よりご挨拶をいただいた。各講演の概略は以下の通り。各講演者の説明資料は協会ホームページに「配布資料」として掲載(会員限定)。
1.メキシコの動向 ~社会・経済情勢から読み解く~ (篠山メキシコ事務所長)
・メキシコ南部でM8.2の大地震が起き、90名以上の死者が出ているが、日本の協力で設立した国家防災センター(CENAPRED)の貢献が期待できる。
・日本との関係は緊密化が進んでいる(ANA、アエロメヒコの毎日1便化、在レオン総領事館・日本経済新聞支局の開設、日系進出企業の急増―2016年11月現在1,111社、8割が自動車関係、地方自治体や学術交流など)。
・自動車産業に関しては、世界第7位の生産国、同第4位の輸出国であるが、現地調達網の未整備や熟練人材の不足などの課題がある。JICAは「自働車産業基盤強化プロジェクト」と「自動車産業人材育成プロジェクト」を通じてこの分野の支援を行っている。
・JICAはメキシコで、医療、環境等の分野で13件の「民間連携事業」を実施している。
2.キューバ:社会主義国家を体現して58年目のキューバ (小澤キューバ駐在員)
・一般のキューバのイメージとは異なるところ(野球よりもサッカーが盛ん。国連ミレニアム開発目標MDGsの達成率が高い。1996年ペルー日本大使公邸人質事件で犯人グループの亡命受け入れを申し出た点等)が散見される。
・歴史的経緯から社会主義化。「競争ではなく共生」で平等社会を達成。キューバ共産党は国家体制であると同時にいわば“宗教”的意味合いもある。来年ラウル・カストロ国家評議会議長が引退すると表明しており、後任もほぼ確定している。社会主義体制はしっかり堅持されるとみられる。
・高水準の医療・教育により途上国を支援しており、貴重な外貨収入源となっている。
・米国との関係では、トランプ大統領はキューバ制裁の強化を公言しているが、関係改善の動きの息の根を止めるようなことはして欲しくない。米国には200万人のキューバ系アメリカ人がいる。
・日本は1970年代に築いたキューバとの良好な関係が遺産として残っており、これを活用することが出来る。
3.ブラジル:「変化するブラジル、変化しないブラジル」中南米最大の日系社会との連携を通じたブラジル社会へのインパクトを目指し(斉藤ブラジル事務所長)
・ブラジルはASEANと比較し、面積は2倍、人口は約1/3、GDPは70%だが、一人当たりGDPはASEAN平均の2.2倍。
・日本はブラジルに航空機部品を輸出し、逆に完成品(飛行機)を輸入している。
・ラバ・ジャットと称される汚職問題はあるが、経済は底を打ち持ち直しつつあるというのが実感。外国直接投資は2017年に増加に転じると予想されているが、中国からの投資が三分の一を占める。
・日系人190万人の存在が大きい。47都道府県の県人会事務所があるのはブラジルだけ。全国の医師に占める日系人の割合は4%で、サンパウロ大学医学部の学生の20%を占めている。JICAは2017年1月に日系医療機関との連携調査団を派遣。
・JICAは司法分野の協力を始めた。
4.ボリビア:多様性の国ボリビア-その潜在力をどう活かすか(立原ボリビア事務所長)
・多様性:国土は山岳地域、渓谷地域、平原地域からなり、地理的多様性に富む。国民も37民族からなる。
・2006年就任の先住民出身のモラレス大統領は、(2016年に4選を目指した憲法改正が国民投票で否決されたが、2019年予定の大統領選挙に再立候補の意向を崩していない。支持基盤は複雑であるが、国会で2/3以上を占める社会主義運動党が与党。
・反米左派政権で、米国大使が不在の国。2013年にUSAID(米国際援助庁)を追放。ただし、政治と経済は別で、米国との貿易は拡大している。
・天然資源を国有化したが、オペレーションは民間に任せている。天然資源を活用した国内の産業化を促進しようとしているが、その実現には課題が多い。日本は亜鉛、銀などを輸入。最近はチアやキヌアの輸入が増加。2019年に移住120周年を迎える。ウユニ塩湖が有名で日本の観光客は増加している。
5.パラグアイ:「チャンスに満ちた国」をどう活かすか(吉田パラグアイ事務所長)
・パラグアイの特徴は国土が平坦なこと。
・約1万人といわれる日系人の存在が大きい。2016年に移住80周年を盛大に祝った。南米の日系移民社会の中で日本語力が最も優れている。
・日本はパラグアイに対する主要な援助供与国である。
・投資環境面での優位性は、メルコスール市場、安い電力料金、治安の良さ、投資優遇制度(マキラ)、フリーゾーン等にある。デメリットはインフラの未整備や人材不足など。
・パラグアイの投資環境については、在日パラグアイ共和国大使館の小冊子「パラグアイ共和国(チャンスに満ちた国)」や、JICAパラグアイのHP「日系社会インタビュー」を参照して欲しい。
講演後、各国と中国との関係、日本製医療機器の可能性などについて、活発な質疑が成された。
【配布資料】
なお、本講演の説明資料はラテンアメリカ協会のホームページに掲載される(会員限定)。
■「メキシコの動向~社会・経済情勢から読み解く~」(PDF)
JICAメキシコ事務所所長 篠山 和良氏 作成
■「社会主義国家を体現して58年目のキューバ」(PDF)
JICAキューバ 小澤 正司氏 作成
■「変化するブラジル、変化しないブラジル」(PDF)
JICAブラジル事務所所長 斉藤 顕生氏 作成
■「多様性の国ボリビア その潜在力をどう活かすか」(PDF)
JICAボリビア事務所所長 立原 佳和氏 作成
竹内JICA中南米部長
JICAメキシコ事務所所長 篠山 和良氏
JICAキューバ 小澤 正司氏
JICAブラジル事務所所長 斉藤 顕生氏
JICAボリビア事務所所長 立原 佳和氏
JICAパラグアイ事務所所長 吉田 英之氏
会場の様子