日本人移住が100年以上の歴史がある南米では、ブラジル、ペルーをはじめ多数の日系人が暮らし、彼らの父祖が持ち込んだ和食に現地の食材を取り込み、独自の変化を遂げてきた「ニッケイ料理」があるが、近年新しい和食のトレンドを盛り込んだニッケイ・フュージョン料理への関心と人気が高まっている。本書はブラジル生まれの日系人シェフが自身の食体験から独創的なアイディアと新しい味の探究をレシピで紹介している。
ブラジルでは味噌ソースを使ったバーベキュー等屋台料理、ペルーではスパイシーなソースで食す刺身、「カリフォルニア・ロール」が南米流に進化し、いずれも大人気だが、本書は日本・ブラジル・ペルーの家庭料理と一流レストランとの垣根を越えて、家庭で作れる100種以上のニッケイ料理を、つまみ、寿司、酢の物、ご飯と麺、スープと鍋、メイン料理、サラダ、デザートに至るレシピと大判のカラー写真で紹介している。単なるレシピ集に留まらず、ニッケイ料理の歴史、和食とブラジル、ペルー、欧州の食材、調理器具の説明と材料別索引も付けてあり、眺めているだけでも楽しい本に仕上がっている。
〔桜井 敏浩〕
(大城光子訳 エクスナレッジ 2017年6月 255頁 2,300円+税 ISBN978-4-7678-2279-2)
〔『ラテンアメリカ時報』2017年秋号(No.1420)より〕